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アメリカ人事 | AI人事活用時に雇用主が今すぐ取るべき3つのアクション

  


AI人事活用時に雇用主が今すぐ取るべき3つのアクション

AIを活用した人事判断が急速に進む中、昇進、解雇、レイオフの判断にAIを使用する企業が増えている。Resume Builderの調査によると、米国の管理職の94%がAIを部下の人事判断に活用しており、特に昇給、昇進、レイオフ、解雇の判断で多用されている。しかし、多くの管理職がAIの倫理的な活用方法について正式な訓練を受けておらず、AIの判断結果に依存するリスクが高まっている状況だ。

この流れは効率化という点で魅力的だが、企業として法的リスク、社内文化の崩壊、従業員からの信頼失墜を招く可能性があるため、AIを活用する際には慎重な運用が必要である。以下、雇用主が今すぐ取るべき3つのアクションを提案する。


1. AI人事活用のポリシーとガイドラインを策定する

まず、AIを用いた人事判断に関する 内部ポリシーと運用ガイドライン を策定する必要がある。
AIは判断の透明性・公平性を担保する可能性がある一方で、誤ったデータやバイアスを学習するリスクが高い。そのため、どのプロセスでAIを活用し、最終判断は誰が行うのかを明確に定め、AIの判断結果のみで解雇や昇進を決定することがないよう運用ルールを作成することが重要である。


2. 管理職にAI活用時の倫理・法的リスクに関する研修を実施する

調査ではAIを活用する管理職のうち、正式な訓練を受けたのはわずか32%であった。AIの判断は従業員の人生を左右する重大な決定であり、その活用には 差別禁止法、プライバシー保護、DEI推進 等、法令遵守および倫理観に基づいた運用が不可欠である。

そのため、管理職向けに「AI活用時の法的留意点と倫理研修」を早急に実施し、AIが判断する基準の妥当性、データバイアス排除の必要性、最終判断時の人間の介入基準について理解させるべきである。


3. AI活用の影響を定期的にモニタリング・監査する

AIを用いた人事判断の運用が始まった後も、定期的なモニタリングと監査が必要である。AIが人事判断に偏りを持ち込んでいないか、特定の属性の従業員の昇進が妨げられていないか、レイオフ・解雇の対象に偏りがないかを データ監査の仕組み により定期的に点検することが重要である。

AIが使うデータそのものの精査や、AIによる判断が実際にどのような結果を生んでいるのかを検証し、問題があれば速やかに調整する体制を構築すべきである。


終わりに

AIは適切に活用すれば業務効率化・公平性向上に資するツールであるが、誤った使い方は法的リスク、従業員のモチベーション低下、組織文化の破壊につながる。「AIを使えば公平になる」という幻想に陥らず、最終的な判断は人間が行う仕組みを堅持することが重要である。

今後のAI活用時代に向けて、上記の3つのアクションを早急に実行し、企業の持続可能な成長と従業員の信頼維持を両立させていきたい。

▼HR DIVEの参考記事【AIを活用する管理職の多くが昇進・解雇の判断にAIを依存】
https://www.hrdive.com/news/managers-use-ai-to-decide-who-gets-promoted-or-fired/752528/?utm_source=Sailthru&utm_medium=email&utm_campaign=Issue:%202025-07-09%20HR%20Dive:%20Talent%20%5Bissue:74734%5D&utm_term=HR%20Dive:%20Talent

▼日本語で簡易要約は下記の通り。

【AIを活用する管理職の多くが昇進・解雇の判断にAIを依存】

2025年7月9日
著者:Carolyn Crist

Resume Builderの6月30日のレポートによると、職場でAIツールを使う管理職の6割のうち、ほぼ全員(94%)が部下の人事決定にAIを使用していることがわかりました。

具体的には、
・昇給の判断(78%)
・昇進の判断(77%)
・レイオフ(解雇)(66%)
・通常の解雇(64%)
などでAIが使用されています。

また、AIを使ってチーム管理をしている管理職の7割以上が「AIは公正かつ偏りのない判断を下せる」と自信を示しています。

しかし一方で、AIを使って人材管理を行う管理職のうち、
・正式な倫理的使用方法についての訓練を受けたのは32%のみ
・非公式な指導を受けたのは43%
・訓練を全く受けていないのは約25%
という結果となっています。

また、AIを活用している管理職の46%が「部下のポジションをAIに置き換え可能か評価するよう指示された」と答え、評価を行った人のうち57%が「置き換え可能」と判断し、43%が実際に人間のポジションをAIに置き換えたと回答しています。

Resume BuilderのキャリアアドバイザーStacie Haller氏は次のようにコメントしています。
「人事管理において『人』の部分を失ってはいけません。AIはデータに基づく洞察を支援できますが、文脈、共感、判断力が欠けています。」
「AIの結果は与えられたデータに依存し、そのデータは不完全で偏りがある場合もあります。企業は法的リスクを回避し、文化を守り、従業員の信頼を維持するためにも、AIを倫理的に活用する責任があります。」

1,300人以上の米国の管理職(部下を持つ人)を対象とした調査では、AIを使う管理職の5人に1人以上が「人間の介入なしでAIが最終決定を下すことがよくある」と回答。しかし、ほぼ全員が「AIの判断に反対する場合は介入する意思がある」とも述べています。

さらに、AIを活用する管理職は以下の用途でもAIを使用していると回答しています。
・研修資料の作成(97%)
・従業員の育成計画(94%)
・パフォーマンス評価(91%)
・パフォーマンス改善計画(88%)

なお、雇用決定にAIを使用すると、AIモデルの学習方法や過去の人間の判断次第でアルゴリズムに偏りが生じる可能性があります。一方で、AIツールは、採用担当者が人事データを客観的に分析し、昇進の機会が与えられていないパターンを発見することで、多様性、公平性、包括性(DEI)推進に役立つ可能性もあります。

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