アメリカ人事|AIによる採用差別訴訟の最前線 Workday v. Mobley — 年齢差別禁止法(ADEA: Age Discrimination in Employment Act)請求で一部敗訴、HRテクノロジーの転換点 HR Consultant|山口憲和 Norikazu Yamaguchi, SHRM-SCP, MBA Philosophy, LLC| ■ サマリー 2026年3月7日、カリフォルニア北部連邦地方裁判所(U.S. District Court for the Northern District of California)は、 Mobley v. Workday, Inc. というAI採用ツールに関する重要な訴訟で判断を示した。 Workdayは、企業向けの採用管理システム(Applicant Tracking System)およびAI採用スクリーニングツールを提供する世界最大級のHRテクノロジー企業である。 今回の裁判では、Workdayが提出した 「この訴訟は法的に成立しないため、裁判の初期段階で却下してほしい」 という申立て(Motion to Dismiss)について、 ・一部は認め ・一部は認めない という判断が下された。 特に重要なのは、 年齢差別禁止法(ADEA: Age Discrimination in Employment Act)が求職者にも適用される可能性 を裁判所が認めた点である。 AIを利用した採用プロセスが急速に広がる中、この裁判は AI採用ツールの法的責任を巡る転換点となる可能性があるケース として大きな注目を集めている。 ■ 事件の概要 本件の原告は Derek Mobley氏 である。 Mobley氏は、自身が ・Workdayの採用システムを使用している ・100社以上の企業 に応募したものの、 すべて不採用になった と主張している。 そして、その原因は AIによる採用スクリーニングが年齢差別を生んでいるためではないか として訴訟を提起した。 訴訟では、以下の連邦法違反が主張されている。 ・年齢差別禁止法(ADEA: Age Discrimination in Employment Act) ・公民権法第7編(Title VII: Civil Rights Act of 1964, ...
アメリカ人事 | 2300万ドルの代償――Kronos障害が突きつけた「有事の給与管理」の盲点 2021年末、ランサムウェア攻撃によって勤怠管理システム「Kronos(UKG)」が突如オフラインになった。その影響は全米の企業に波及し、数週間にわたって多くの人事チームが手動での給与計算を迫られた。 そして今、その余波がまだ続いている。 Hondaは先日、この障害に起因する賃金・労働時間法違反の訴訟において、 230万ドル(約3億4000万円)の和解 に合意した(2026年3月4日付・裁判所提出書類より)。 訴訟の骨子はシンプルだ。 「システムが止まったとき、Hondaは実働時間を計測せず、推定値で給与を処理した。その結果、公正労働基準法(FLSA)上の残業代が適切に支払われなかった」 和解対象となる従業員は最大で 約1万61人 に上り、複数の訴訟が一括で処理される見込みである。Hondaは訴訟の一部却下を求めたが、「残業未払いへの対応が過度に遅延したか否か」という争点については、裁判所が審理継続を認めた。 同社は「従業員への正確かつ適時の給与支払いに引き続きコミットしており、この問題に決着をつけられることを喜ばしく思う」とコメントしている。 この事案が人事に問いかけるもの Kronos障害で訴訟を起こされたのはHondaだけではない。Frito-LayやニューヨークMTAなど、名だたる組織が同様の問題に直面した。 共通する教訓は何か。 勤怠システムが止まったとき、どう給与を処理するか ――バックアップ手順を文書化しているか 推定払いは法的リスクを伴う ――FLSAは「推定」を免責しない 対応の遅延そのものが違反になりうる ――未払いの残業代をいつまでに精算するか、明確なルールがあるか システム障害は「ITの問題」ではない。 それは人事と法務が連携して備えるべき、賃金コンプライアンスのリスクシナリオ である。 あなたの組織のBCP(事業継続計画)に、給与計算の緊急対応プロセスは含まれているだろうか。 参考:HR Dive, March 2026 https://www.hrdive.com/news/honda-agrees-to-23-million-dollar-settlement-kronos-outage-lawsuits/814177/?u...