2026年10月6日火曜日

アメリカ人事 | 第317号 | 2027年カリフォルニア州の新しい法律とEmployee Handbookの修正ポイントについて

 アメリカ人事 | 第317号 | 2027年カリフォルニア州の新しい法律とEmployee Handbookの修正ポイントについて

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アメリカ人事 Ⓡ 第404回 | 2027年カリフォルニア州の新しい法律とEmployee Handbookの修正ポイントについて

▼動画解説は下記のリンクから

https://youtu.be/GviX7fcQKBM

【カリフォルニア州】知事が主な雇用関連法案に署名、更年期保護の法案(AB 1940)は廃案

カリフォルニア州のニューサム知事は、2026年9月末に雇用に関する多くの法案に署名しました。この号外では、今年署名された主な14の法律と、昨年成立して2027年から適用される1つの法律を取り上げます。一方、更年期の保護を差別禁止法に加える法案(AB 1940)には拒否権を行使し、この法案は廃案となりました。

今回の中心は「人工知能(AI)」と「従業員の監視」です。ほとんどの法律は2027年1月1日に施行されます。準備期間は約3か月です。

この号外では、各法律が雇用主に何を求めているか、そして Employee Handbook(従業員ハンドブック)のどこを変更すべきかをまとめます。

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■ 一覧:2027年に向けた主な15の法律と、廃案になった1の法案

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【1】SB 947(署名)

内容:自動意思決定システム・人工知能による懲戒・解雇には人間の確認が必要

施行日:2027年7月1日(Fisher Phillips による)

【2】SB 951(署名)

内容:人工知能が原因の大量レイオフを通知書で開示

施行日:2027年1月1日

【3】AB 1883(署名)

内容:人工知能で従業員の感情・神経データを読み取ることを禁止

施行日:2027年1月1日

【4】SB 690(署名)

内容:ウェブサイトのトラッキングに関する訴訟を制限

施行日:2027年1月1日

【5】AB 1331(署名)

内容:トイレでの監視ツール使用を禁止

施行日:2027年1月1日

【6】SB 1237(署名)

内容:賃金データ報告の罰金を引き上げ

施行日:次回報告期限 2027年5月12日から影響

【7】SB 464(昨年成立)

内容:賃金データ報告の職種区分が10から23に増加

施行日:2027年から適用

【8】AB 2646(署名)

内容:農業の最低賃金 時給19.75ドル

施行日:2027年1月1日

【9】AB 1697(署名)

内容:「Stay-or-Pay」禁止の開始を1年延期

施行日:2027年1月1日

【10】SB 1149(署名)

内容:忌引休暇の対象を拡大

施行日:2027年1月1日

【11】AB 1803(署名)

内容:ハラスメント防止研修にヘイトスピーチを追加

施行日:2028年1月1日

【12】AB 2321(署名)

内容:州労働安全衛生局の権限強化、調査妨害は犯罪に

施行日:2027年1月1日

【13】AB 2563(署名)

内容:差別禁止法の「性別」の定義を拡大

施行日:2027年1月1日

【14】AB 2495(署名)

内容:在留資格に関連する不当な行為の禁止を拡大

施行日:2027年1月1日

【15】AB 2155(署名)

内容:仲裁合意の有効性に関するルールを変更

施行日:2027年1月1日

【廃案】AB 1940(拒否権により廃案)

内容:更年期を差別禁止法の保護対象に追加

施行日:成立せず

※ SB は州上院の法案(Senate Bill)、AB は州下院の法案(Assembly Bill)です。

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■ 1. 人工知能(AI)に関する3つの法律

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◆ SB 947:人工知能だけで従業員を懲戒・解雇してはならない

【法律が求めること】

・雇用主が人工知能ツールを「主な根拠」として従業員を懲戒または解雇する場合、人間が独立して内容を確認しなければなりません。

・確認する人は、上司の評価、人事ファイル、仕事の成果物などの証拠で、ツールの結果を裏づける必要があります。

・決定を伝える時点で、従業員に独立した書面の通知を渡さなければなりません。

・従業員は、過去12か月間にシステムが使った自分のデータの説明を求めることができます。

・対象は現在の従業員のみです。応募者は対象外です。

・罰金は1件の違反につき500ドルです。施行日は、Fisher Phillips の記事によると2027年7月1日です。CalChamber の記事はこの法律の施行日に触れていません。

この法律の対象は、人工知能を含む「自動意思決定システム(Automated Decision System)」全般です。雇用主は、このシステムを次の目的で使うこともできません。

・連邦・州・地方の労働法の遵守を妨げること

・労働安全衛生、雇用、公民権に関する法律や規則を守らないこと

・カリフォルニア州公正雇用住宅法(Fair Employment and Housing Act)で保護される属性を推測すること

・法律上の権利を行使する労働者を予測したり、その労働者に不利益な扱いをしたりすること

【Employee Handbook の変更点】

・懲戒・解雇の方針に「最終判断は必ず人間が行う」と明記します。

・人工知能ツールを人事判断に使う場合の方針を新しく追加します。

・従業員が自分のデータについて説明を求める手続き(窓口と方法)を記載します。

・Handbook とは別に、解雇・懲戒時に渡す通知書のひな形を用意します。

◆ SB 951:人工知能が原因の大量レイオフは通知書で開示する

【法律が求めること】

・大量レイオフ、事業所の移転、閉鎖が「全部または相当部分」人工知能や自動化によるものである場合、カリフォルニア州の大量解雇事前通知法(California Worker Adjustment and Retraining Notification Act)の通知書に、4つの項目を追加します。

 (a) 通知書の冒頭に「This notice is for a technology displacement」と記載する

 (b) 影響を受ける職位の数と種類

 (c) 自動化される職務の内容

 (d) 原因となった技術の種類

・州は四半期ごとに技術による人員削減の概要を公表します。会社の情報が一般の人、労働組合、原告側弁護士の目に触れる可能性があります。

・施行日は2027年1月1日です。

【Employee Handbook の変更点】

・通常、Handbook 本文の変更は必要ありません。

・レイオフ時に使う通知書のひな形と社内手続きを更新します。

・大量レイオフを行う規模の会社が対象で、小規模の会社への影響は限定的です。

◆ AB 1883:人工知能で従業員の感情や神経データを読み取ることを禁止

【法律が求めること】

・雇用主は、人工知能を使った職場の監視ツールで、従業員の感情の状態を認識または予測してはなりません。

・従業員の神経系から「神経データ」を集めることも禁止です。

・対象になりうるツールの例:コールセンターや社内チャットの感情分析機能、メールやチャットを分析する人事分析ツール、集中度や疲労を測る脳波ヘッドバンドやイヤホン。

・安全を確保するためのツールには例外があります。ただし、例外の範囲はまだ明確ではありません。

・罰金は1件の違反につき最大500ドルです。施行日は2027年1月1日です。

【Employee Handbook の変更点】

・電子機器・通信の監視に関する方針(Electronic Monitoring / Technology Use Policy)に、「感情の分析や神経データの収集は行わない」と追記します。

・現在使っているソフトウェアに感情分析の機能がないか、ベンダーに確認します。機能がある場合は停止します。

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■ 2. 職場の監視とプライバシーに関する2つの法律

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◆ SB 690:ウェブサイトのトラッキングに関する訴訟を制限

【法律が求めること】

・これは企業にとって良いニュースです。新しい義務を課す法律ではありません。

・これまで、ウェブサイトのクッキー、ピクセル、アクセス解析ツールがカリフォルニア州プライバシー侵害法(California Invasion of Privacy Act)に違反するとして、多数の訴訟や請求書が出されてきました。法定損害賠償は1件につき5,000ドル以上です。

・2027年1月1日から、ウェブサイトやアプリに関する「pen register」「trap-and-trace」の請求について、個人が訴訟を起こすことはできなくなります。取り締まりは州司法長官が行います。

・過去2年以内に提起された係属中の請求にもさかのぼって適用されます。

・ただし、同じ法律の「盗聴(wiretapping)」に関する請求は対象外です。さかのぼり適用についても、原告側が争うと見られています。

【Employee Handbook の変更点】

・変更は必要ありません。これは従業員ではなく、ウェブサイトの利用者に関する法律です。

・係属中の請求や請求書がある会社は、弁護士に影響を確認してください。

◆ AB 1331:トイレでは監視ツールを使えない

【法律が求めること】

・裁判所の命令がない限り、職場のトイレで監視ツールを使って従業員を監視することはできません。

・「監視ツール」の定義は広く、入退室バッジ、ウェアラブル端末、会社携帯の位置情報、待機時間を記録する勤怠ソフトウェアも含まれます。

・従業員は、トイレに入る前にこれらのツールを置いていくことができます。それを理由に懲戒することはできません。

・例外:休憩中も連絡がつく状態でいる必要がある従業員、入退室時の1回のバッジ認証、携帯が義務づけられた身分証や安全機器(録音・録画機能がなく、人工知能を内蔵していないものに限る)。

・トイレの利用回数や利用時間を追跡するために、入退室データを使うことはできません。

・罰金は1件の違反につき最大500ドルです。施行日は2027年1月1日です。

【Employee Handbook の変更点】

・監視に関する方針に「トイレ内では監視を行わない」と明記します。

・「従業員はトイレに入る前にバッジや端末を置いてよい」「それを理由に不利益な扱いをしない」と追記します。

・会社携帯・位置情報・勤怠管理の方針を見直し、トイレ休憩を「待機時間」として評価や懲戒に使わないことを確認します。

・管理職に、トイレの回数や時間をデータで追跡しないよう周知します。

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■ 3. 賃金と報酬に関する4つの法律

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◆ SB 1237:賃金データ報告の罰金を引き上げ

【法律が求めること】

・対象は、従業員100人以上(または派遣会社などを通じて雇う労働者100人以上)の雇用主です。毎年、州の公民権局(Civil Rights Department)に賃金データ報告を提出する義務があります。

・2回目以降の未提出に対する罰金の上限が、従業員1人につき200ドルから1,000ドルに上がります。

・1回目の違反の上限は、従業員1人につき100ドルのままです。

・次回の報告期限は2027年5月12日です。この回から高い罰金が適用される可能性があります。

【Employee Handbook の変更点】

・変更は必要ありません。

・対象となる会社は、報告義務の有無、派遣会社からのデータ入手、過去の未提出の有無を確認してください。

◆ SB 464:賃金データ報告の職種区分が10から23に増える

【法律が求めること】

・昨年成立した法律ですが、2027年から適用されます。

・賃金データ報告で使う職種区分の数が、10から23に増えます。

・報告義務のある会社(従業員100人以上)は、2027年に公表される新しい報告様式を確認してください。

【Employee Handbook の変更点】

・変更は必要ありません。

◆ AB 2646:農業の最低賃金が時給19.75ドルに

【法律が求めること】

・2027年1月1日から、農業の雇用主は、H-2A(農業の短期就労ビザ)の労働者と「corresponding employees(同じ仕事をする従業員)」に時給19.75ドルを支払う必要があります。

・2028年からは毎年、物価に合わせて調整されます。

・参考:2027年の州全体の最低賃金は時給17.40ドルです。

・高い時給は、食事・休憩の割増賃金、出勤手当(reporting time pay)、分割シフト手当、最終給与の遅延ペナルティの計算にも影響します。

【Employee Handbook の変更点】

・変更は必要ありません。

・最低賃金の金額は毎年変わるため、Handbook には記載せず、給与の設定で対応することをおすすめします。

【参考:州最低賃金とエグゼンプト従業員の最低年収】

・カリフォルニア州の最低賃金は、2027年1月1日から時給17.40ドルに上がります。

・これに伴い、残業代の対象外となるフルタイムのエグゼンプト(Exempt)従業員の最低年収は、72,384ドル(月額6,032ドル)になります。

・市や郡が独自の最低賃金を定めている場合があります。州より高い場合は、その地域の最低賃金を支払う必要があります。多くの地域で2027年1月1日に引き上げがあります。

・最低賃金や最低年収の金額は毎年変わるため、Handbook には記載しないことをおすすめします。給与の設定で対応し、エグゼンプト従業員の給与が新しい最低年収を下回らないか確認してください。

◆ AB 1697:「Stay-or-Pay」禁止の開始を1年延期

【法律が求めること】

・「Stay-or-Pay」とは、退職する従業員に研修費用などを返済させる契約のことです。昨年成立した AB 692 がこれを禁止しました(一部の学費返済や入社時ボーナスは例外)。

・AB 1697 は、この禁止の開始日を2026年1月1日から2027年1月1日に延期します。2026年中に結んだ契約について、雇用主は責任を問われません。

・新しい例外も追加されました。

 - 助成金による採用・定着プログラム

 - 従業員が自己都合で退職する場合の、前払いした有給休暇(Paid Time Off)の返済

 - 証券ブローカー・ディーラー、保険プロデューサー、投資アドバイザーの一部の契約

【Employee Handbook の変更点】

・研修費用の返済、学費補助(Tuition Reimbursement)、定着ボーナス(Retention Bonus)の規定を見直し、2027年1月1日以降の契約が法律の例外に当てはまる形に整えます。

・前払いの有給休暇を認めている会社は、「自己都合退職の場合は返済を求める」という規定が例外として認められます。文言を確認してください。

・既存の契約は、修正や取り消しをしないでください。

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■ 4. 休暇・研修・職場の安全に関する3つの法律

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◆ SB 1149:忌引休暇の対象が広がる

【法律が求めること】

・現在の忌引休暇(Bereavement Leave)の対象は、配偶者、子、親、兄弟姉妹、祖父母、孫、ドメスティックパートナー、義理の親です。

・2027年1月1日から、「designated person(指定する人)」が亡くなった場合も忌引休暇を取ることができます。

・「designated person」とは、血縁関係のある人、または家族と同等の関係にある人です。おじ、おば、いとこ、家族のように親しい友人も含まれます。

・忌引休暇は最大5日間です。

・従業員は、休暇を申請する時点で「designated person」を指定できます。

・雇用主は、忌引休暇の「designated person」を12か月につき1人に制限できます。

【Employee Handbook の変更点】

・忌引休暇の方針の「対象となる家族」の定義に、「designated person」を追加します。これは必須の変更です。

・休暇申請書の「故人との関係」の欄もあわせて更新します。

・「designated person」を12か月につき1人に制限する場合は、その制限を方針に明記します。

◆ AB 1803:ハラスメント防止研修にヘイトスピーチの内容を追加

【法律が求めること】

・対象は従業員5人以上の雇用主です。

・2028年1月1日から、義務であるセクシュアルハラスメント防止研修に、ヘイトスピーチ防止の内容を加える必要があります。

・研修では、保護される属性を理由に人を中傷したり、侮辱したり、憎しみをあおったりする発言について、気づき方・報告のしかた・対応のしかたを具体的に教えます。

・別の研修を作る必要はありません。研修時間も増えません。

・現在の研修が、保護される属性に基づくハラスメントや虐待的な行為をすでに扱っていれば、新しい要件を満たします。

【Employee Handbook の変更点】

・ハラスメント・差別・報復の禁止方針に、禁止される行為の例としてヘイトスピーチを加えることをおすすめします。

・研修の内容を確認し、研修ベンダーに対応予定を問い合わせます。期限は2028年ですが、早めの準備が安心です。

◆ AB 2321:州労働安全衛生局の権限強化、調査の妨害は犯罪に

【法律が求めること】

・2027年1月1日から、カリフォルニア州労働安全衛生局(California Division of Occupational Safety and Health、通称 Cal/OSHA)の調査局(Bureau of Investigations)は、より広い範囲の事故を速やかに調査します。

・調査の対象には、重大なけがだけでなく、重大な病気や有害物質への曝露、故意の違反(willful violation)に関連する重大事故も含まれます。

・調査局は、一定の重大事故を知った時点で、調査の終了を待たずにすぐ検察に通知します。

・州労働安全衛生局の職務を故意に妨害することは軽罪(misdemeanor)になります。最長6か月の拘禁と罰金が科されます。

【Employee Handbook の変更点】

・安全衛生の方針に「行政の調査には誠実に協力する」「調査を妨害してはならない」と明記します。

・事故・けがの報告手続きに、重大な病気や有害物質への曝露も報告対象として加えます。

・Handbook とは別に、立入検査への対応計画(誰が対応するか、誰に連絡するか)を作成し、管理職を研修します。

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■ 5. 差別防止・採用に関する3つの法律

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◆ AB 2563:差別禁止法の「性別」の定義が広がる

【法律が求めること】

・カリフォルニア州公正雇用住宅法(Fair Employment and Housing Act)は、現在「性別」に妊娠、出産、授乳、関連する症状、性自認、性表現を含めています。

・2027年1月1日から、次の内容も明記されます。

 - 割り当てられた性別または性別区分(女性、男性、ノンバイナリーを含む)

 - 性別に関する固定観念にどの程度当てはまるか

 - 性別適合ケア(gender affirming care)と関連する医療の利用

 - 妊娠や関連する症状についての意思決定、医療へのアクセス、薬・機器・サービスの利用

 - 性的特徴の多様性(インターセックスなど)

【Employee Handbook の変更点】

・差別・ハラスメント・報復の禁止方針と、雇用機会均等(Equal Employment Opportunity)の方針にある「性別」の定義を更新します。これは必須の変更です。

◆ AB 2495:在留資格に関連する不当な行為の禁止が広がる

【法律が求めること】

・現行法は、権利を行使した労働者への報復として、雇用主が在留資格に関連する不当な行為をすることを禁止しています。

・AB 2495 は、在留資格(そう見なされている場合を含む)に関連する次の行為を明確に禁止します。

 - 権利の行使を思いとどまらせるような行為

 - 本人がしない権利を持つ行為をさせるように仕向ける行為

・実際の在留資格は責任の判断に関係ありません。

・保護の対象は、応募者、従業員、元従業員です。

【Employee Handbook の変更点】

・報復禁止の方針に「在留資格に関する言動で、権利の行使を妨げない」と追記することをおすすめします。

・管理職に、在留資格に触れる発言をしないよう周知します。

◆ AB 2155:仲裁合意の有効性に関するルールが変わる

【法律が求めること】

・カリフォルニア州仲裁法(California Arbitration Act)に、連邦仲裁法(Federal Arbitration Act)の適用除外が取り込まれます。

・取り込まれる適用除外には、州をまたぐ輸送に従事する労働者と、性的暴行・セクシュアルハラスメントの争い(Ending Forced Arbitration of Sexual Assault and Sexual Harassment Act)が含まれます。

・州の仲裁法だけが適用される場合でも、これらの適用除外が働きます。その結果、一部の仲裁合意は無効になります。

【Employee Handbook の変更点】

・仲裁合意書(Arbitration Agreement)を使っている会社は、弁護士に見直しを依頼してください。

・Handbook に仲裁の条項がある場合は、合意書の内容と合わせて更新します。

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■ 6. 廃案になった法案:AB 1940(更年期の保護)

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ニューサム知事は AB 1940 に拒否権を行使し、この法案は廃案となりました。この法案は、カリフォルニア州公正雇用住宅法(Fair Employment and Housing Act)の「性別」の定義に、更年期前後の状態と関連する症状を明記するものでした。

知事は拒否の理由として、「現行法がすでにこれらの状態を保護している」「訴訟が急増するおそれがある」と説明しています。来年、新しい知事のもとで再び提出される見込みです。なお、同じ「性別」の定義を広げる AB 2563 は署名されましたが、更年期はその中に含まれていません。

【Employee Handbook の変更点】

・変更は必要ありません。ただし、知事自身が「現行法で保護されている」と述べています。更年期に関する相談や配慮の申し出は、これまでどおり慎重に対応してください。

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ありがとうございます!

山口 憲和 Norikazu (Kazu) Yamaguchi, MBA, SHRM-SCP

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2026年9月15日火曜日

アメリカ人事、静かに、しかし確実に転換点を迎えている=ルーカス委員長のビデオより

 アメリカ人事、静かに、しかし確実に転換点を迎えている=ルーカス委員長のビデオより

――EEOCの「反米バイアス」摘発強化から見えてくるもの
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先日、EEOC(米国雇用機会均等委員会)のアンドレア・ルーカス委員長が、LinkedInとX(旧Twitter)に自ら動画を投稿し、労働者に対して次のように呼びかけました。
https://x.com/USEEOC/status/2099494113666027777?s=20

 

「英語を話すことや、あまりにもアメリカ的であることを理由に、職場でハラスメントを受けたことはありますか」

「あなたは解雇され、自分の代わりに採用されたH-1Bビザなど就労ビザ保有者を教育するよう指示されたことはありませんか」

このニュースを目にしたとき、私は「ついにここまで来たか」という感覚を持ちました。20年以上、日系企業のアメリカでのHR・保険業務に携わってきた者として、今のアメリカの雇用機会均等の枠組みは、私たちが慣れ親しんできた前提から大きく舵を切りつつあると感じています。今日は、その背景と、日系企業として何を注意すべきかを整理してみたいと思います。

 

1964年公民権法から60年、EEOCの役割が変わりつつある

アメリカの雇用差別禁止の歴史を振り返ると、出発点は1964年公民権法第七編(Title VII)です。人種、肌の色、宗教、性別、出身国(national origin)を理由とする雇用差別を禁止し、これを執行する機関としてEEOCが設立されました。

その2年後の1966年からは、一定規模以上の企業に従業員の人種・性別構成を報告させるEEO-1リポートの提出が始まりました。以来60年、EEOCの実務上の重点は、歴史的に不利益を受けてきたマイノリティや女性の保護、そして企業に自主的な是正措置(Affirmative Action)を促すことに置かれてきました。私たち日系企業も、採用や昇進の場面でこの枠組みを前提に、社内規程や研修を組み立ててきたはずです。

しかし、この数年でその前提が大きく揺らいでいます。

 

Affirmative Actionの廃止、DEI関連訴訟、そして「反米バイアス」

2025年1月、トランプ政権は連邦契約業者に対するAffirmative Action(積極的差別是正措置)を義務付けてきた大統領令11246号を撤回しました。1965年にジョンソン大統領が署名して以来、60年近く連邦契約業者の人事慣行の土台となってきた枠組みが消えたことになります。

同時に、DEI(多様性・公平性・包摂性)の取り組みそのものが、逆に「白人男性や、いわゆるマジョリティに対する逆差別ではないか」という観点から次々と提訴の対象になっています。EEOCも2025年から、白人男性に対して職場での差別を通報するよう呼びかける動画を出すなど、方向性を明確に転換してきました。

そして今回、2026年9月14日に公開されたのが、冒頭の「反米バイアス」を通報するよう呼びかける動画です。ルーカス委員長は、外国資本・外国系の経営が多い企業について、「非アメリカ人を主に採用・昇進させていないか」「町の工場が急に地元住民の採用をやめ、外国人労働者ばかりを雇うようになっていないか」といった、かなり踏み込んだ問いかけをしています。

参考記事:HR Dive「EEOC solicits anti-American bias charges」 https://www.hrdive.com/news/EEOC-Lucas-anti-American-bias/830317/

 EEOCルーカス委員長のLinkedInアカウント https://www.linkedin.com/in/andrea-lucas-a5b27513/

 ※動画はルーカス委員長ご本人のLinkedInおよびX公式アカウントから2026年9月14日に投稿されたもので、投稿そのものへの直接リンクは確認できておらず、上記アカウント経由でのご確認をお願いします。

 

保護されるグループの概念は維持されるのか?

ここで一つ、多くの方が疑問に思うであろう点を整理しておきたいと思います。「保護されるグループ(protected class)という概念自体は、これからも維持されるのか」という点です。

Title VIIの条文自体は、1964年の制定以来一度も変わっていません。人種、肌の色、宗教、性別、出身国(national origin)を理由とする差別を禁止するという文言は、当初からマイノリティだけでなく、あらゆる個人を対象にしています。しかし実務上・判例上は長年、マジョリティ側(例えば白人や男性)が差別を訴える、いわゆる「reverse discrimination(逆差別)」の主張には、通常より重い立証責任――「その雇用主が異例なほどマジョリティを差別する体質を持っていることを示す背景事情(background circumstances)」を追加で示す必要がある、という判例上のハードルが多くの巡回区で課されてきました。同じ条文でありながら、実際には「保護に値するグループ」と「そうでないグループ」を区別する運用がなされてきたわけです。

この構図が2025年6月、連邦最高裁のAmes対オハイオ州青少年局事件判決によって覆されました。最高裁は全員一致で、Title VIIは「その個人がマイノリティに属するかマジョリティに属するかを問わず、すべての『個人』に同一の保護を与えている」と明言し、マジョリティ側にのみ追加の立証を求めてきたbackground circumstancesの要件を否定しました。ルーカスEEOC委員長はこの判決を歓迎する声明の中で、「『逆』差別という概念そのものが消えた。保護された特性を理由にした差別は、誰が行い、誰が影響を受けようと、単なる差別に過ぎない」と述べています。

つまり答えは、「保護されるグループという概念(人種・性別・出身国などのカテゴリーそのもの)は維持されるが、『マイノリティだから手厚く、マジョリティだから立証のハードルが高い』という運用上の色分けは撤廃された」ということではないでしょうか。今回の「反米バイアス」摘発強化も、この文脈で理解する必要があります。「アメリカ人」という属性を新たに特別扱いして保護しているのではなく、出身国を理由とする差別という既存のカテゴリーを、アメリカ人にも他の国籍の人にもまったく同じ基準で適用しているだけ、というのがEEOCの立場です。

日系企業にとっては、この理解が実務上とても重要です。「アメリカ人従業員は保護対象のマイノリティではないから、多少の差は問題にならないだろう」という感覚は、もはや通用しません。駐在員か現地採用かを問わず、どの国籍の従業員であっても同じ立証のしやすさで差別を主張できる時代になった、という前提で人事制度を点検する必要があります。

(参考:Ames v. Ohio Department of Youth Services最高裁判決についてのEEOC公式声明 https://www.eeoc.gov/wysk/statement-eeoc-acting-chair-andrea-lucas-celebrating-supreme-courts-unanimous-ruling-ames )

 

日系企業にとって他人事ではない ― グアムのリゾート事案

ここで日系企業の経営者・人事担当の皆さんに、ぜひ知っておいていただきたい実例があります。

グアムの大手リゾート施設を運営するLeoPalace Guam Corporationが、EEOCから提訴され、2025年2月に141万2,500ドルの和解金を支払うことで決着した事案です。EEOCの主張は、2015年以降、同社が日本出身の従業員を、同等またはそれ以下のポジションの非日本人(アメリカ人を含む)従業員よりも有利な賃金・福利厚生・労働条件で処遇していた、というものでした。和解には和解金の支払いに加え、外部のEEOモニターの設置、研修と規程の見直し、希望する元従業員の復職機会の提供、3年間にわたる裁判所の管轄下での定期監査といった、かなり重い是正措置が含まれています。

(参考:EEOC公式発表

https://www.eeoc.gov/newsroom/leopalace-resort-pay-over-14-million-eeoc-national-origin-discrimination-lawsuit  )

この事案が象徴しているのは、「駐在員を厚遇し、現地採用のアメリカ人スタッフとの間に待遇差を設ける」という、日系企業では長らく当たり前のように行われてきた人事慣行そのものが、まさにEEOCが今、標的にしている「非アメリカ人優遇」の典型例として扱われうる、という現実です。駐在員手当、住宅手当、帰国旅費といった処遇は、単身赴任や本国からの異動という事情を踏まえた合理的な制度である一方、それが「同じ仕事をしているのに、日本出身かどうかで給与や昇進のスピードが違う」という形で表面化すれば、Title VII上のnational origin discriminationとして問われるリスクがあります。

私たち日系企業は何をすべきか

今回の一連の動きを踏まえ、私は次の3点を、クライアントの皆さまにもお伝えしています。

第一に、駐在員と現地採用者の処遇差について、その根拠を今一度言語化しておくことです。「駐在員だから」ではなく、「本国からの転勤に伴う住居移転コストの補填」「本国給与体系との調整」など、職務内容や状況の違いに基づく合理的な説明ができるようにしておく必要があります。

第二に、採用・昇進のプロセスにおいて、出身国や国籍を理由にした事実上の選別が行われていないか、点検することです。特に日本語能力を応募要件にする場合、その業務上の必要性を明確にしておくことが重要になります。

第三に、社内のコミュニケーションのあり方です。「日本語だけで会議を進める」「日本人同士だけのグループチャットで重要な業務連絡をする」といった慣行が、非日本人スタッフを疎外していると受け取られれば、今回ルーカス委員長が動画で名指しした「反米バイアス」の典型例そのものに当てはまってしまいます。

おわりに

1964年のTitle VIIから始まったアメリカの雇用機会均等の枠組みは、60年かけてマイノリティ保護を軸に発展してきましたが、ここへ来て振り子が大きく逆に振れています。DEIそのものが訴訟リスクとなり、Affirmative Actionは撤廃され、今度は「反米バイアス」が新たな摘発の重点分野になった。これはアメリカのHR・人事労務にとって、まさに大きな転換点だと私は感じています。

日系企業にとって特に注意すべきは、こうした流れの矛先が、私たちが長年当たり前としてきた駐在員優遇の慣行そのものに向きうるという点です。グアムの事案は決して対岸の火事ではありません。この機会に、御社の人事制度を今一度見直してみてはいかがでしょうか。

写真の出所
https://unsplash.com/ja/@cristina_glebova


ありがとうございます!山口憲和
山口 憲和  Norikazu (Kazu) Yamaguchi, MBA, SHRM-SCP
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今年もこの季節がやって参りました。

 今年もこの季節がやって参りました。

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■カリフォルニア州2027年の新しい法律
ニューサム知事は9月30日までに、議会が最終休会前に可決した多くの法案を署名するか拒否するかを決定します。

HRチームにとっては「監視期間」であり、署名された法案が確定すると、2027年に向けてポリシー、通知、研修、システム、管理職の運用などを迅速に見直す必要があります。

---

SB 947:雇用判断におけるAI利用

雇用主が自動化された判断システム(ADS)を使用する際の新しい要件を定める。特定の雇用判断については人によるレビューを義務付け、従業員には開示請求の権利を与える。

SB 951:AIと人員削減

レイオフ、事業所移転、解雇がAIまたはその他の自動化と実質的に関連している場合、Cal-WARN の通知要件を追加する。

 

SB 1237:給与データ報告

給与データ報告の未提出に対する再違反の最大罰金を、従業員1人あたり200ドルから1,000ドルへ引き上げる。

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AB 1940:更年期の保護

周閉経期、更年期、閉経後、および関連症状を、カリフォルニア州の雇用差別禁止法の保護対象として明確に追加する。

 

SB 1149:忌引き休暇

忌引き休暇の保護を拡大し、「指定された人物(designated person)」の死去も対象に含める。

 

AB 2495:移民関連の報復行為

移民ステータスに関連した報復·強要行為の防止を強化し、違反には民事罰が科される可能性がある。

以上です。進捗あり次第、レポートします。

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2026年9月8日火曜日

アメリカ人事|報酬がもらえるからやる という人は要らない。

 アメリカ人事|報酬がもらえるからやる という人は要らない。

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評価制度を見直したい、報酬テーブルを作り直したい——クライアント企業からこうしたご相談をいただくたびに、私はいつも一つ質問を返すようにしています。

「その制度は、社員に“やる気”を出させるためのものですか? 
それとも、もともとやる気のある社員が、
不公平だと感じずに働き続けるためのものですか?」

この二つは、似ているようでまったく別の話です。

そして多くの会社は、前者を期待して評価・報酬制度を設計し、
後者の役割しか果たせない制度に予算と時間を使い続けています。

評価と報酬を精緻にするほど、なぜか人は動かなくなる

複雑な評価シートを作り、KPIを細分化し、達成度に応じてボーナスを何段階にも分ける——真面目な会社ほど、こうした制度を丁寧に作り込みます。ところが現場で起きるのは、社員が「評価される項目だけ」を頑張り、評価されない部分は手を抜くという現象です。心理学ではこれを「アンダーマイニング効果」と呼びます。

ただし、これはすべての成果連動報酬に一律に起きるわけではありません。デシ、ケストナー、ライアンによる128件の実験を対象にしたメタ分析では、報酬が「統制されている」と感じられる場合——活動への参加そのものへの見返りや、行動を続けさせるための誘導として提示される場合——に内発的動機が下がりやすい一方、能力や成果を認める情報として受け取られるフィードバックは、むしろ意欲を支えることが示されています。つまり重要なのは報酬の有無そのものではなく、本人がそれを「統制」と感じるか「承認」と感じるかです。もともと興味を持って取り組んでいた仕事に、統制的に感じられる成果連動報酬を後付けすると、本人が活動の理由を「仕事そのもの」から「報酬を得るため」へと捉え直し、意欲が弱まってしまう場合がある、というのがより正確な理解です。

報酬制度は、社員のやる気を「作る」ためのものではなく、すでにあるやる気を「削がない」ためのもの——まずこの前提に立たないと、設計そのものが的外れになります。


フロー理論が教えてくれること:「その仕事自体」に没頭できるか

心理学者チクセントミハイが提唱した「フロー」という概念があります。行為の結果(お金、評価、他人からの称賛)のためではなく、その行為をしている過程そのものから満足感を得て没頭している状態のことです。彼はこれを「自己目的的体験(オートテリック・エクスペリエンス)」と呼びました。

登山家が山頂に立つことより岩を登る動作そのものに歓びを感じ、演奏家が拍手より音を奏でる瞬間に没入する。フロー研究では、明確な目標・即時のフィードバック・挑戦とスキルの適切な釣り合いは、フローそのものではなく、フローを生じさせやすくする「条件」として扱われます。強い集中、行為と意識の融合、自己意識の低下、時間感覚の変化といった「経験そのもの」とは区別される、という点は押さえておく必要があります。

しかも、この条件が揃えば必ず没頭できるわけではありません。仕事の目的に納得していない、裁量がない、周囲との関係がぎくしゃくしている、疲労や不安が強いといった状況では、同じ条件が揃っていてもフローは生まれにくくなります。フローが起きやすい仕事には、本人の技能に対して適度に難しい課題、明確な目標、進捗や成果がわかるフィードバック、そして一定の裁量がある——これらは外的報酬の代わりになるというより、活動そのものへの集中と内発的な関与を支える「仕事の条件」だと理解するのが正確です。

つまり人事の本当の仕事は、「頑張らせる評価制度を作ること」ではなく、「頑張らずにいられない仕事の条件を整えること」なのではないか、というのが今回の問いです。


Netflixが変動報酬を「あえて」設計しない理由

この話をするとき、私がよく引き合いに出すのがNetflixです。同社は業績連動のボーナスやインセンティブ制度を採用していません。代わりに、その人の市場価値の最高水準に相当する固定給を支払う「パーソナル・トップ・オブ・マーケット」という考え方を公式に掲げています。

ヘイスティングスは、業績連動賞与よりも高い固定給与を重視する理由として、年初に立てた目標が年末には的外れになっていることがある点、目標達成に意識が向きすぎて会社の今のニーズを見失うリスク、追加報酬が不確実であること自体が創造性を損なうことなどを挙げています。特に創造的な職務では、細かな成果指標だけでは仕事の質を十分に測れない、という考え方です。

Netflixの文化では、期待される成果に届かない社員には、改善計画よりも十分な退職パッケージを用意して早期に組織を離れてもらう、という考え方が知られています。優秀な人材を高密度で揃える「タレント・デンシティ」を重視するからこそ、細かなボーナスで行動を誘導する必要が薄れる、という順序です。

ただし、Netflixが「報酬が多くもらえるから働くタイプの人は採用しない」という基準を公式に掲げているわけではありません。より正確に言えば、短期的な追加報酬がなければ高い成果を出さない人を前提に組織を設計せず、自律的に高い成果を目指せる人を採用したうえで経済的な不安を取り除く固定給与を支払い、業績賞与による短期的な行動誘導は避けている、ということです。

 

では、評価・報酬制度はもう要らないのか

ここで誤解してほしくないのは、「評価も報酬も撤廃すればいい」という話ではないということです。報酬や評価には、職務設計だけでは代替できない役割があります。

同じ貢献をしているのに給与が変わらなければ、それ自体が不公平感を生み、意欲を削ぎます。市場水準から外れた処遇を続ければ、フローを感じていた優秀な社員ほど先に辞めていきます。最低限の説明責任やコンプライアンス上、評価の記録が必要な場面も、アメリカで複数州にまたがって事業をしている日系企業には特に多くあります。

給与は、不足すれば不満や離職を生み、不公平であれば意欲を削ぎます。同時に、高い水準の報酬が承認や達成感として機能したり、採用競争力そのものになったりする面も持っています。だからこそ、評価・報酬は「短期的に人を動かす主な動機づけ装置」としてではなく、まず公平性・市場競争力・生活の安定・貢献の承認を担保する、主として衛生要因としての基盤に位置づけ直す。そのうえで、実際に仕事への関与を支えるエンジンは、自律性・習熟・意味づけ・適切な挑戦・即時のフィードバックを組み込んだ「仕事そのものの設計」に置く——これが現実的な役割分担だと私は考えています。

中小規模の日系企業の現場でできること

Netflixのような大企業でなくても、この考え方は応用できます。

  • 年1回の評価面談だけに頼らず、日常の中で小さな達成にすぐフィードバックを返す仕組みを作る(フローには「即時性」が不可欠です)
  • 業務のやり方や進め方に、本人なりの裁量の余地を残す(すべてを手順書とチェックリストで縛らない)
  • 「この仕事が誰の役に立っているか」を、数字の目標より先に伝える
  • 採用面接で、報酬水準の話より先に「何にやりがいを感じるか」を確認する
  • 評価制度は、モチベーションを作る道具ではなく、公平性を守るための最低限の仕組みとして設計し直す
  • 評価と報酬を、ひとつの制度に詰め込みすぎない

最後の点は特に見落とされがちです。評価と報酬をひとつの仕組みに全部背負わせようとすると、かえって制度が複雑になり、フィードバックまでもが「統制」として受け取られやすくなります。次のように役割を分けると、制度全体が安定します。

仕組み

主な目的

給与テーブル

市場水準と社内の公平性

職務・役割定義

期待される責任と裁量の明確化

目標設定

方向づけと優先順位

1on1

学習、障害の除去、フィードバック

評価

昇給・昇進・配置の判断材料

賞与

会社・チーム・個人の成果配分

表彰・承認

貢献の可視化と意味づけ

特に、日常的なフィードバックを、その場で給与や賞与にすぐ結びつけないことが重要です。「良い仕事をした」→即座に賞与額が変わる、という構造にすると、フィードバックが承認ではなく統制として受け取られやすくなります。むしろ「良い仕事だった、何がうまくいったか一緒に確認しよう」「次はどんな挑戦をしてみたいか」という対話のほうが、習熟・意味づけ・自律性を支えます。

 

 

まとめ:報酬で動く人を採らない、という選択

評価制度や報酬テーブルをどれだけ精密に作り込んでも、仕事そのものがつまらなければ、人は「評価される分だけ」しか動きません。逆に、挑戦とスキルが釣り合い、意味が見え、フィードバックがすぐ返ってくる仕事であれば、報酬はその人を引き留める土台であって、動かす原動力である必要はなくなります。

「報酬がもらえるからやる」人を評価制度で管理しようとするのではなく、そもそもそういう人を採らずに済む仕事と組織を作れているか。今、評価制度の見直しを考えている経営者の方には、ぜひこの順番で問い直してみていただきたいと思います。

出典・参考文献

  • Deci, E. L., Koestner, R., & Ryan, R. M. (1999). A Meta-Analytic Review of Experiments Examining the Effects of Extrinsic Rewards on Intrinsic Motivation. Psychological Bulletin, 125(6), 627-668. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10589297/

 

 

 

 

2026年8月17日月曜日

アメリカ人事 | 第316号 | 2027年のカリフォルニア州の法律はどうなるのか?

 アメリカ人事 | 第316号 | 2027年のカリフォルニア州の法律はどうなるのか?

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▼事業の目的・意義を明確にする。具体的な目標を立てる。強烈な願望を心に抱く。

3つを実現するためのワークショップを実施します。

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カリフォルニア州最低賃金引き上げと雇用主の義務(2027年1月1日施行)

インフレ率(消費者物価指数)に連動する州法に基づき、カリフォルニア州の最低賃金が自動調整されます。

改定内容: 最低賃金が時給17.40ドル(現行の16.90ドルから引き上げ)になります。企業規模や従業員数を問わず、州内のすべての雇用主に一律適用されます。

ホワイトカラー・エグゼンプト(残業代免除)への重大な影響:

最低賃金の引き上げに伴い、エグゼンプト分類に必要な最低年俸基準が72,384ドルに上昇します。

連邦法(FLSA)より厳格なカリフォルニア州法において、この基準を1ドルでも下回れば「非エグゼンプト(残業代支払い対象)」とみなされ、巨額の未払い残業代やペナルティを伴う集団訴訟リスクに直結します。

▼詳しくは下記の動画にて

https://youtu.be/9IzOtNypWZ8

 

 

▼現在審議されている2027年カリフォルニア州の法案の例です。(全てまだ未定です)

  • AB 1940: Menopause-Related Protections / 更年期関連の保護 — FEHA上の性差別保護を拡大し、更年期前・更年期・更年期後の医学的状態を保護対象に追加。雇用主に方針・研修・配慮対応の見直しを求める可能性があります。
  • AB 1803: Anti-Hate Speech Training / ヘイトスピーチ防止研修 — FEHA研修義務のある雇用主に適用。既存のセクハラ防止研修にヘイトスピーチ防止内容の追加を義務化。研修の焦点をハラスメント防止からヘイトスピーチの認識・防止へ拡大します。
  • SB 951: Expansion of Cal/WARN Notice for AI-Driven Mass Layoffs / AI起因の大量解雇に対するCal/WARN通知の拡大 — SB 947の関連法案で、自動化やAI導入による解雇を対象。強化されたWARN通知要件と、EDDへの「技術による雇用混乱通知」の提出を新設。自動化を大規模導入する前の労働力への影響評価の必要性を強調します。
  • SB 947: The No Robo Bosses Act Returns / ノー・ロボ・ボス法の再提出 — Newsom知事が昨年拒否した法案を、自動意思決定の核心概念を維持しつつ修正。特定の雇用判断において自動意思決定システムを唯一の根拠とすることを制限。解雇や懲戒など重大な判断に焦点を当てます。
  • AB 1883: Regulation of Workplace Surveillance Tools and Worker Data / 職場監視ツールと労働者データの規制 — 特定の監視ツール使用を禁止し、神経データの収集や感情状態の認識を行うAIを制限。違反1件につき従業員1人あたり最大500ドルの罰則と私的訴権を新設。雇用主に監視技術・データ慣行・ベンダーの監査を求める可能性があります。
  • SB 1149: Expanded Bereavement Leave / 忌引休暇の拡大 — 「指定された人」の死亡を対象に忌引休暇を拡大。血縁者や、家族関係に相当する関係にある人を含む。当該死亡について最大5日間の休暇を付与し、現行の対象範囲を広げます。
  • AB 1961: Easier Access to Workplace Violence Restraining Orders / 職場暴力接近禁止命令の取得容易化 — 職場や従業員全般に向けられた脅威に対し、雇用主が接近禁止命令を申請可能に。特定可能な従業員のグループや区分の保護を認める。個々の従業員を保護対象として指名する必要をなくし、信頼できる脅威への迅速な対応を容易にします。

ありがとうございます!山口憲和
山口 憲和  Norikazu (Kazu) Yamaguchi, MBA, SHRM-SCP

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2026年8月11日火曜日

Botsitting AIの仕事が終わるのを座って待っている時間

 


Botsitting AIの仕事が終わるのを座って待っている時間

が新たな生産性の課題に。

待っている間にマルチタスクになって逆に生産性が落ちてしまうことも。

 

記事の中では
ASAPやPleaseという言葉を依頼に入れると逆に仕事が36%遅くなる。

私の場合、依頼にこの言葉、使ってしまいます。

スタッフに仕事を頼んでもなかなか上がってこない

返信がない

こんなことがよくある。

期日を設けない依頼は25%完了しない確率が上がるとか。

依頼しているのに返事がないので、何度もメールすると

マイクロマネジメントだと言われてキレてしまいます。

 

結局どうやったらよくなるのか?

 

▼タスクの依頼方法

 

  • 「please」「ASAP」「!!!」は避け、中立的で直接的な表現で依頼する(遅延率38%→31%に低下) →それでも7%だけか!
  • 感情的な催促より、シンプルに事実として依頼を伝える→これは習慣化できているな。

 

▼オーナーシップの明確化

 

  • 1タスク1担当者を徹底する(共同担当より時間内完了率が約70%高い)→これは通常分担させていない。
  • 可能なら本人に手を挙げてもらう(自発的タスクは70%以上が期限内完了)→そこまでスタッフいないです。

 

▼依頼の場所

 

  • 1対1のDMではなく、グループチャンネルで依頼する(期限内完了率44%向上)。周囲の目があることで責任感が働く→なるほど、アメリカ人でも周囲の目は効果ありか。

 

▼期限の設定

 

  • 必ず具体的な締切を付ける。期限なしのタスクは「永遠に完了しない」確率が2.5倍→見積等簡単な依頼にここまで〆切り設けられるかな。すぐやってもらうのが基本なんだが。。。。

 

▼AIとの付き合い方

 

「botsitting(AIのお守り)」に時間を取られすぎないよう、AI活用の範囲を見極める

→私の場合はマルチタスクになって混乱することが!今何をやっているのかフォーカスしないと。ADHD気味なので、なかなか難しい。
▼出所
https://www.hrdive.com/news/please-asap-slow-work-productivity/827565/?utm_source=Sailthru&utm_medium=email&utm_campaign=Issue:%202026-08-11%20HR%20Dive:%20Talent%20%5Bissue:87992%5D&utm_term=HR%20Dive:%20Talent

 

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#アメリカ人事 #アメリカ #人事 #HR 

 

 

 

 

 

2026年8月6日木曜日

米国の組織の36%が「ピーナッツバター昇給」

米国の組織の36%が「ピーナッツバター昇給」

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調査によると2026年には、米国の組織の36%が「ピーナッツバター昇給」として知られる一律昇給を実施しました。
しかし、2027年に一律昇給を計画していると答えた企業は32%にとどまりました。

下記リンクのPayscaleのレポートによるとこのような昇給形態はモチベーションの低下を招く可能性があり、25%の企業が2026年に「不十分な昇給による従業員の離職」を経験したと指摘しているとのこと。

https://www.hrdive.com/news/payscale-merit-increases-remain-popular-as-peanut-butter-raises-trend-do/827207/?utm_source=Sailthru&utm_medium=email&utm_campaign=Issue%3A+2026-08-06+HR+Dive%3A+Talent+%5Bissue%3A87857%5D&utm_term=HR+Dive%3A+Talent&fbclid=IwY2xjawTiUr1wZG9mBWV4dG4DYWVtAjExAHNydGMGYXBwX2lkEDIyMjAzOTE3ODgyMDA4OTIAAR6rXe7joEGjLCYFowSqc6FAhChoCHxgsVHdVf9tQiZvH97bF7CghbTwRgbdvw_aem_ggorPwIw4FJJU5nfe4l7hA

薄く均一に塗る、誰にとっても物足らない、という意味からピーナッツバターと言うとか。因みにパンにピーナッツバターを塗るのはとても伝統的なパンの食べ方。ここにイチゴジャムも塗って、ピーナッツバター&ジェリー(PB&J)にするのが一般的。アメリカでは果汁ベースのジャムを「ジェリー」と呼びます。

アメリカのピーナッツバターって日本のみたいに水飴が入ってないから甘くないんですよねー。ジャムと合わせるとちょうどよい感じ。
ベーグルとかにもPB&J塗って売ってたりします!



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