2026年9月15日火曜日

アメリカ人事、静かに、しかし確実に転換点を迎えている=ルーカス委員長のビデオより

 アメリカ人事、静かに、しかし確実に転換点を迎えている=ルーカス委員長のビデオより

――EEOCの「反米バイアス」摘発強化から見えてくるもの
2026_09_15_usa_cristinaglebovafyqqbr0ezk

先日、EEOC(米国雇用機会均等委員会)のアンドレア・ルーカス委員長が、LinkedInとX(旧Twitter)に自ら動画を投稿し、労働者に対して次のように呼びかけました。
https://x.com/USEEOC/status/2099494113666027777?s=20

 

「英語を話すことや、あまりにもアメリカ的であることを理由に、職場でハラスメントを受けたことはありますか」

「あなたは解雇され、自分の代わりに採用されたH-1Bビザなど就労ビザ保有者を教育するよう指示されたことはありませんか」

このニュースを目にしたとき、私は「ついにここまで来たか」という感覚を持ちました。20年以上、日系企業のアメリカでのHR・保険業務に携わってきた者として、今のアメリカの雇用機会均等の枠組みは、私たちが慣れ親しんできた前提から大きく舵を切りつつあると感じています。今日は、その背景と、日系企業として何を注意すべきかを整理してみたいと思います。

 

1964年公民権法から60年、EEOCの役割が変わりつつある

アメリカの雇用差別禁止の歴史を振り返ると、出発点は1964年公民権法第七編(Title VII)です。人種、肌の色、宗教、性別、出身国(national origin)を理由とする雇用差別を禁止し、これを執行する機関としてEEOCが設立されました。

その2年後の1966年からは、一定規模以上の企業に従業員の人種・性別構成を報告させるEEO-1リポートの提出が始まりました。以来60年、EEOCの実務上の重点は、歴史的に不利益を受けてきたマイノリティや女性の保護、そして企業に自主的な是正措置(Affirmative Action)を促すことに置かれてきました。私たち日系企業も、採用や昇進の場面でこの枠組みを前提に、社内規程や研修を組み立ててきたはずです。

しかし、この数年でその前提が大きく揺らいでいます。

 

Affirmative Actionの廃止、DEI関連訴訟、そして「反米バイアス」

2025年1月、トランプ政権は連邦契約業者に対するAffirmative Action(積極的差別是正措置)を義務付けてきた大統領令11246号を撤回しました。1965年にジョンソン大統領が署名して以来、60年近く連邦契約業者の人事慣行の土台となってきた枠組みが消えたことになります。

同時に、DEI(多様性・公平性・包摂性)の取り組みそのものが、逆に「白人男性や、いわゆるマジョリティに対する逆差別ではないか」という観点から次々と提訴の対象になっています。EEOCも2025年から、白人男性に対して職場での差別を通報するよう呼びかける動画を出すなど、方向性を明確に転換してきました。

そして今回、2026年9月14日に公開されたのが、冒頭の「反米バイアス」を通報するよう呼びかける動画です。ルーカス委員長は、外国資本・外国系の経営が多い企業について、「非アメリカ人を主に採用・昇進させていないか」「町の工場が急に地元住民の採用をやめ、外国人労働者ばかりを雇うようになっていないか」といった、かなり踏み込んだ問いかけをしています。

参考記事:HR Dive「EEOC solicits anti-American bias charges」 https://www.hrdive.com/news/EEOC-Lucas-anti-American-bias/830317/

 EEOCルーカス委員長のLinkedInアカウント https://www.linkedin.com/in/andrea-lucas-a5b27513/

 ※動画はルーカス委員長ご本人のLinkedInおよびX公式アカウントから2026年9月14日に投稿されたもので、投稿そのものへの直接リンクは確認できておらず、上記アカウント経由でのご確認をお願いします。

 

保護されるグループの概念は維持されるのか

ここで一つ、多くの方が疑問に思うであろう点を整理しておきたいと思います。「保護されるグループ(protected class)という概念自体は、これからも維持されるのか」という点です。

Title VIIの条文自体は、1964年の制定以来一度も変わっていません。人種、肌の色、宗教、性別、出身国(national origin)を理由とする差別を禁止するという文言は、当初からマイノリティだけでなく、あらゆる個人を対象にしています。しかし実務上・判例上は長年、マジョリティ側(例えば白人や男性)が差別を訴える、いわゆる「reverse discrimination(逆差別)」の主張には、通常より重い立証責任――「その雇用主が異例なほどマジョリティを差別する体質を持っていることを示す背景事情(background circumstances)」を追加で示す必要がある、という判例上のハードルが多くの巡回区で課されてきました。同じ条文でありながら、実際には「保護に値するグループ」と「そうでないグループ」を区別する運用がなされてきたわけです。

この構図が2025年6月、連邦最高裁のAmes対オハイオ州青少年局事件判決によって覆されました。最高裁は全員一致で、Title VIIは「その個人がマイノリティに属するかマジョリティに属するかを問わず、すべての『個人』に同一の保護を与えている」と明言し、マジョリティ側にのみ追加の立証を求めてきたbackground circumstancesの要件を否定しました。ルーカスEEOC委員長はこの判決を歓迎する声明の中で、「『逆』差別という概念そのものが消えた。保護された特性を理由にした差別は、誰が行い、誰が影響を受けようと、単なる差別に過ぎない」と述べています。

つまり答えは、「保護されるグループという概念(人種・性別・出身国などのカテゴリーそのもの)は維持されるが、『マイノリティだから手厚く、マジョリティだから立証のハードルが高い』という運用上の色分けは撤廃された」ということではないでしょうか。今回の「反米バイアス」摘発強化も、この文脈で理解する必要があります。「アメリカ人」という属性を新たに特別扱いして保護しているのではなく、出身国を理由とする差別という既存のカテゴリーを、アメリカ人にも他の国籍の人にもまったく同じ基準で適用しているだけ、というのがEEOCの立場です。

日系企業にとっては、この理解が実務上とても重要です。「アメリカ人従業員は保護対象のマイノリティではないから、多少の差は問題にならないだろう」という感覚は、もはや通用しません。駐在員か現地採用かを問わず、どの国籍の従業員であっても同じ立証のしやすさで差別を主張できる時代になった、という前提で人事制度を点検する必要があります。

(参考:Ames v. Ohio Department of Youth Services最高裁判決についてのEEOC公式声明 https://www.eeoc.gov/wysk/statement-eeoc-acting-chair-andrea-lucas-celebrating-supreme-courts-unanimous-ruling-ames )

 

日系企業にとって他人事ではないグアムのリゾート事案

ここで日系企業の経営者・人事担当の皆さんに、ぜひ知っておいていただきたい実例があります。

グアムの大手リゾート施設を運営するLeoPalace Guam Corporationが、EEOCから提訴され、2025年2月に141万2,500ドルの和解金を支払うことで決着した事案です。EEOCの主張は、2015年以降、同社が日本出身の従業員を、同等またはそれ以下のポジションの非日本人(アメリカ人を含む)従業員よりも有利な賃金・福利厚生・労働条件で処遇していた、というものでした。和解には和解金の支払いに加え、外部のEEOモニターの設置、研修と規程の見直し、希望する元従業員の復職機会の提供、3年間にわたる裁判所の管轄下での定期監査といった、かなり重い是正措置が含まれています。

(参考:EEOC公式発表

https://www.eeoc.gov/newsroom/leopalace-resort-pay-over-14-million-eeoc-national-origin-discrimination-lawsuit  )

この事案が象徴しているのは、「駐在員を厚遇し、現地採用のアメリカ人スタッフとの間に待遇差を設ける」という、日系企業では長らく当たり前のように行われてきた人事慣行そのものが、まさにEEOCが今、標的にしている「非アメリカ人優遇」の典型例として扱われうる、という現実です。駐在員手当、住宅手当、帰国旅費といった処遇は、単身赴任や本国からの異動という事情を踏まえた合理的な制度である一方、それが「同じ仕事をしているのに、日本出身かどうかで給与や昇進のスピードが違う」という形で表面化すれば、Title VII上のnational origin discriminationとして問われるリスクがあります。

私たち日系企業は何をすべきか

今回の一連の動きを踏まえ、私は次の3点を、クライアントの皆さまにもお伝えしています。

第一に、駐在員と現地採用者の処遇差について、その根拠を今一度言語化しておくことです。「駐在員だから」ではなく、「本国からの転勤に伴う住居移転コストの補填」「本国給与体系との調整」など、職務内容や状況の違いに基づく合理的な説明ができるようにしておく必要があります。

第二に、採用・昇進のプロセスにおいて、出身国や国籍を理由にした事実上の選別が行われていないか、点検することです。特に日本語能力を応募要件にする場合、その業務上の必要性を明確にしておくことが重要になります。

第三に、社内のコミュニケーションのあり方です。「日本語だけで会議を進める」「日本人同士だけのグループチャットで重要な業務連絡をする」といった慣行が、非日本人スタッフを疎外していると受け取られれば、今回ルーカス委員長が動画で名指しした「反米バイアス」の典型例そのものに当てはまってしまいます。

おわりに

1964年のTitle VIIから始まったアメリカの雇用機会均等の枠組みは、60年かけてマイノリティ保護を軸に発展してきましたが、ここへ来て振り子が大きく逆に振れています。DEIそのものが訴訟リスクとなり、Affirmative Actionは撤廃され、今度は「反米バイアス」が新たな摘発の重点分野になった。これはアメリカのHR・人事労務にとって、まさに大きな転換点だと私は感じています。

日系企業にとって特に注意すべきは、こうした流れの矛先が、私たちが長年当たり前としてきた駐在員優遇の慣行そのものに向きうるという点です。グアムの事案は決して対岸の火事ではありません。この機会に、御社の人事制度を今一度見直してみてはいかがでしょうか。

写真の出所
https://unsplash.com/ja/@cristina_glebova


ありがとうございます!山口憲和
山口 憲和  Norikazu (Kazu) Yamaguchi, MBA, SHRM-SCP
CA Insurance License: 0F78137
日本キャッシュフローコーチ協会認定コーチ 会員番号463
------------------------------------------------------
Philosophy, LLC 
Philosophy Insurance Services 
609 Deep Valley Drive, WEST TOWER Suite 358
Rolling Hills Estates, CA 90274 
TEL  310-465-9173 (お電話は日時を予約していただけると大変助かります)
FAX 310-356-3352 
▼【アメリカ人事】月に1回の最新情報。無料メルマガ登録は今すぐ!下記のリンクから
------------------------------------------------------
Disclaimer: Please note that Norikazu Yamaguchi makes every effort to offer accurate, common-sense, ethical Human Resources management, employer, workplace, and Insurance information on this email, but Norikazu Yamaguchi is not an attorney, and the content on this email is not to be construed as legal advice.  When in doubt, always seek legal counsel. The information in the email is provided for guidance only, never as legal advice. We will not be responsible for any damages caused by using this information.
 
【このメールをご覧になる前に必ずご確認下さい】
免責事項:山口憲和は、このメールの中で正確で常識的、倫理的な人事管理、雇用者、
職場、保険情報等を提供するために万全を期していますが、山口憲和は弁護士ではなく、このメールの内容は 法的助言として解釈できません。 法的助言は常に弁護士に相談してください。 この電子メール上の情報は、ガイダンスのためだけに提供されており、決して法的助言として提供されるものではありません。この情報を利用して損害が生じた場合でも弊社では責任を負いかねますのでご了承下さい。
★「訴訟大国アメリカで生き残るために」全戦全笑(どんな困難も笑いに変える)精神で全力で支援致します。

 

今年もこの季節がやって参りました。

 今年もこの季節がやって参りました。

2026_09_15_ca_dreikubik77wv8nx2laounspla

■カリフォルニア州2027年の新しい法律
ニューサム知事は9月30日までに、議会が最終休会前に可決した多くの法案を署名するか拒否するかを決定します。

HRチームにとっては「監視期間」であり、署名された法案が確定すると、2027年に向けてポリシー、通知、研修、システム、管理職の運用などを迅速に見直す必要があります。

---

SB 947:雇用判断におけるAI利用

雇用主が自動化された判断システム(ADS)を使用する際の新しい要件を定める。特定の雇用判断については人によるレビューを義務付け、従業員には開示請求の権利を与える。

SB 951:AIと人員削減

レイオフ、事業所移転、解雇がAIまたはその他の自動化と実質的に関連している場合、Cal-WARN の通知要件を追加する。

 

SB 1237:給与データ報告

給与データ報告の未提出に対する再違反の最大罰金を、従業員1人あたり200ドルから1,000ドルへ引き上げる。

---

AB 1940:更年期の保護

周閉経期、更年期、閉経後、および関連症状を、カリフォルニア州の雇用差別禁止法の保護対象として明確に追加する。

 

SB 1149:忌引き休暇

忌引き休暇の保護を拡大し、「指定された人物(designated person)」の死去も対象に含める。

 

AB 2495:移民関連の報復行為

移民ステータスに関連した報復·強要行為の防止を強化し、違反には民事罰が科される可能性がある。

以上です。進捗あり次第、レポートします。

Thank you for your photo image!
https://unsplash.com/ja/@dreikubik

2026年9月8日火曜日

アメリカ人事|報酬がもらえるからやる という人は要らない。

 アメリカ人事|報酬がもらえるからやる という人は要らない。

2026_09_08_gettyimagesrrgojj_drteunsplas

評価制度を見直したい、報酬テーブルを作り直したい——クライアント企業からこうしたご相談をいただくたびに、私はいつも一つ質問を返すようにしています。

「その制度は、社員に“やる気”を出させるためのものですか? 
それとも、もともとやる気のある社員が、
不公平だと感じずに働き続けるためのものですか?」

この二つは、似ているようでまったく別の話です。

そして多くの会社は、前者を期待して評価・報酬制度を設計し、
後者の役割しか果たせない制度に予算と時間を使い続けています。

評価と報酬を精緻にするほど、なぜか人は動かなくなる

複雑な評価シートを作り、KPIを細分化し、達成度に応じてボーナスを何段階にも分ける——真面目な会社ほど、こうした制度を丁寧に作り込みます。ところが現場で起きるのは、社員が「評価される項目だけ」を頑張り、評価されない部分は手を抜くという現象です。心理学ではこれを「アンダーマイニング効果」と呼びます。

ただし、これはすべての成果連動報酬に一律に起きるわけではありません。デシ、ケストナー、ライアンによる128件の実験を対象にしたメタ分析では、報酬が「統制されている」と感じられる場合——活動への参加そのものへの見返りや、行動を続けさせるための誘導として提示される場合——に内発的動機が下がりやすい一方、能力や成果を認める情報として受け取られるフィードバックは、むしろ意欲を支えることが示されています。つまり重要なのは報酬の有無そのものではなく、本人がそれを「統制」と感じるか「承認」と感じるかです。もともと興味を持って取り組んでいた仕事に、統制的に感じられる成果連動報酬を後付けすると、本人が活動の理由を「仕事そのもの」から「報酬を得るため」へと捉え直し、意欲が弱まってしまう場合がある、というのがより正確な理解です。

報酬制度は、社員のやる気を「作る」ためのものではなく、すでにあるやる気を「削がない」ためのもの——まずこの前提に立たないと、設計そのものが的外れになります。


フロー理論が教えてくれること:「その仕事自体」に没頭できるか

心理学者チクセントミハイが提唱した「フロー」という概念があります。行為の結果(お金、評価、他人からの称賛)のためではなく、その行為をしている過程そのものから満足感を得て没頭している状態のことです。彼はこれを「自己目的的体験(オートテリック・エクスペリエンス)」と呼びました。

登山家が山頂に立つことより岩を登る動作そのものに歓びを感じ、演奏家が拍手より音を奏でる瞬間に没入する。フロー研究では、明確な目標・即時のフィードバック・挑戦とスキルの適切な釣り合いは、フローそのものではなく、フローを生じさせやすくする「条件」として扱われます。強い集中、行為と意識の融合、自己意識の低下、時間感覚の変化といった「経験そのもの」とは区別される、という点は押さえておく必要があります。

しかも、この条件が揃えば必ず没頭できるわけではありません。仕事の目的に納得していない、裁量がない、周囲との関係がぎくしゃくしている、疲労や不安が強いといった状況では、同じ条件が揃っていてもフローは生まれにくくなります。フローが起きやすい仕事には、本人の技能に対して適度に難しい課題、明確な目標、進捗や成果がわかるフィードバック、そして一定の裁量がある——これらは外的報酬の代わりになるというより、活動そのものへの集中と内発的な関与を支える「仕事の条件」だと理解するのが正確です。

つまり人事の本当の仕事は、「頑張らせる評価制度を作ること」ではなく、「頑張らずにいられない仕事の条件を整えること」なのではないか、というのが今回の問いです。


Netflixが変動報酬を「あえて」設計しない理由

この話をするとき、私がよく引き合いに出すのがNetflixです。同社は業績連動のボーナスやインセンティブ制度を採用していません。代わりに、その人の市場価値の最高水準に相当する固定給を支払う「パーソナル・トップ・オブ・マーケット」という考え方を公式に掲げています。

ヘイスティングスは、業績連動賞与よりも高い固定給与を重視する理由として、年初に立てた目標が年末には的外れになっていることがある点、目標達成に意識が向きすぎて会社の今のニーズを見失うリスク、追加報酬が不確実であること自体が創造性を損なうことなどを挙げています。特に創造的な職務では、細かな成果指標だけでは仕事の質を十分に測れない、という考え方です。

Netflixの文化では、期待される成果に届かない社員には、改善計画よりも十分な退職パッケージを用意して早期に組織を離れてもらう、という考え方が知られています。優秀な人材を高密度で揃える「タレント・デンシティ」を重視するからこそ、細かなボーナスで行動を誘導する必要が薄れる、という順序です。

ただし、Netflixが「報酬が多くもらえるから働くタイプの人は採用しない」という基準を公式に掲げているわけではありません。より正確に言えば、短期的な追加報酬がなければ高い成果を出さない人を前提に組織を設計せず、自律的に高い成果を目指せる人を採用したうえで経済的な不安を取り除く固定給与を支払い、業績賞与による短期的な行動誘導は避けている、ということです。

 

では、評価・報酬制度はもう要らないのか

ここで誤解してほしくないのは、「評価も報酬も撤廃すればいい」という話ではないということです。報酬や評価には、職務設計だけでは代替できない役割があります。

同じ貢献をしているのに給与が変わらなければ、それ自体が不公平感を生み、意欲を削ぎます。市場水準から外れた処遇を続ければ、フローを感じていた優秀な社員ほど先に辞めていきます。最低限の説明責任やコンプライアンス上、評価の記録が必要な場面も、アメリカで複数州にまたがって事業をしている日系企業には特に多くあります。

給与は、不足すれば不満や離職を生み、不公平であれば意欲を削ぎます。同時に、高い水準の報酬が承認や達成感として機能したり、採用競争力そのものになったりする面も持っています。だからこそ、評価・報酬は「短期的に人を動かす主な動機づけ装置」としてではなく、まず公平性・市場競争力・生活の安定・貢献の承認を担保する、主として衛生要因としての基盤に位置づけ直す。そのうえで、実際に仕事への関与を支えるエンジンは、自律性・習熟・意味づけ・適切な挑戦・即時のフィードバックを組み込んだ「仕事そのものの設計」に置く——これが現実的な役割分担だと私は考えています。

中小規模の日系企業の現場でできること

Netflixのような大企業でなくても、この考え方は応用できます。

  • 年1回の評価面談だけに頼らず、日常の中で小さな達成にすぐフィードバックを返す仕組みを作る(フローには「即時性」が不可欠です)
  • 業務のやり方や進め方に、本人なりの裁量の余地を残す(すべてを手順書とチェックリストで縛らない)
  • 「この仕事が誰の役に立っているか」を、数字の目標より先に伝える
  • 採用面接で、報酬水準の話より先に「何にやりがいを感じるか」を確認する
  • 評価制度は、モチベーションを作る道具ではなく、公平性を守るための最低限の仕組みとして設計し直す
  • 評価と報酬を、ひとつの制度に詰め込みすぎない

最後の点は特に見落とされがちです。評価と報酬をひとつの仕組みに全部背負わせようとすると、かえって制度が複雑になり、フィードバックまでもが「統制」として受け取られやすくなります。次のように役割を分けると、制度全体が安定します。

仕組み

主な目的

給与テーブル

市場水準と社内の公平性

職務・役割定義

期待される責任と裁量の明確化

目標設定

方向づけと優先順位

1on1

学習、障害の除去、フィードバック

評価

昇給・昇進・配置の判断材料

賞与

会社・チーム・個人の成果配分

表彰・承認

貢献の可視化と意味づけ

特に、日常的なフィードバックを、その場で給与や賞与にすぐ結びつけないことが重要です。「良い仕事をした」即座に賞与額が変わる、という構造にすると、フィードバックが承認ではなく統制として受け取られやすくなります。むしろ「良い仕事だった、何がうまくいったか一緒に確認しよう」「次はどんな挑戦をしてみたいか」という対話のほうが、習熟・意味づけ・自律性を支えます。

 

 

まとめ:報酬で動く人を採らない、という選択

評価制度や報酬テーブルをどれだけ精密に作り込んでも、仕事そのものがつまらなければ、人は「評価される分だけ」しか動きません。逆に、挑戦とスキルが釣り合い、意味が見え、フィードバックがすぐ返ってくる仕事であれば、報酬はその人を引き留める土台であって、動かす原動力である必要はなくなります。

「報酬がもらえるからやる」人を評価制度で管理しようとするのではなく、そもそもそういう人を採らずに済む仕事と組織を作れているか。今、評価制度の見直しを考えている経営者の方には、ぜひこの順番で問い直してみていただきたいと思います。

出典・参考文献

  • Deci, E. L., Koestner, R., & Ryan, R. M. (1999). A Meta-Analytic Review of Experiments Examining the Effects of Extrinsic Rewards on Intrinsic Motivation. Psychological Bulletin, 125(6), 627-668. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10589297/

 

 

 

 

2026年8月17日月曜日

アメリカ人事 | 第316号 | 2027年のカリフォルニア州の法律はどうなるのか?

 アメリカ人事 | 第316号 | 2027年のカリフォルニア州の法律はどうなるのか?

Facebook_cover_blue_coach

=============================================

▼事業の目的・意義を明確にする。具体的な目標を立てる。強烈な願望を心に抱く。

3つを実現するためのワークショップを実施します。

https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:US:2e15b2c6-5fba-4227-8f02-f543f00b6b80

 

 

▼利用するすごろく12ヶ月シート

https://youtube.com/shorts/0qxWA2QmE74?si=wddShHJNLviMaxzY
▼利用するすごろく12年シート

https://youtube.com/shorts/EDQ4hOi4_jk?si=7ZQvHKj7-vAtdzh7


▼お問い合わせは今すぐ
yamaguchi@yourphilosophy.net

=============================================

 

カリフォルニア州最低賃金引き上げと雇用主の義務(2027年1月1日施行)

インフレ率(消費者物価指数)に連動する州法に基づき、カリフォルニア州の最低賃金が自動調整されます。

改定内容: 最低賃金が時給17.40ドル(現行の16.90ドルから引き上げ)になります。企業規模や従業員数を問わず、州内のすべての雇用主に一律適用されます。

ホワイトカラー・エグゼンプト(残業代免除)への重大な影響:

最低賃金の引き上げに伴い、エグゼンプト分類に必要な最低年俸基準が72,384ドルに上昇します。

連邦法(FLSA)より厳格なカリフォルニア州法において、この基準を1ドルでも下回れば「非エグゼンプト(残業代支払い対象)」とみなされ、巨額の未払い残業代やペナルティを伴う集団訴訟リスクに直結します。

▼詳しくは下記の動画にて

https://youtu.be/9IzOtNypWZ8

 

 

▼現在審議されている2027年カリフォルニア州の法案の例です。(全てまだ未定です)

  • AB 1940: Menopause-Related Protections / 更年期関連の保護 — FEHA上の性差別保護を拡大し、更年期前・更年期・更年期後の医学的状態を保護対象に追加。雇用主に方針・研修・配慮対応の見直しを求める可能性があります。
  • AB 1803: Anti-Hate Speech Training / ヘイトスピーチ防止研修 — FEHA研修義務のある雇用主に適用。既存のセクハラ防止研修にヘイトスピーチ防止内容の追加を義務化。研修の焦点をハラスメント防止からヘイトスピーチの認識・防止へ拡大します。
  • SB 951: Expansion of Cal/WARN Notice for AI-Driven Mass Layoffs / AI起因の大量解雇に対するCal/WARN通知の拡大 — SB 947の関連法案で、自動化やAI導入による解雇を対象。強化されたWARN通知要件と、EDDへの「技術による雇用混乱通知」の提出を新設。自動化を大規模導入する前の労働力への影響評価の必要性を強調します。
  • SB 947: The No Robo Bosses Act Returns / ノー・ロボ・ボス法の再提出 — Newsom知事が昨年拒否した法案を、自動意思決定の核心概念を維持しつつ修正。特定の雇用判断において自動意思決定システムを唯一の根拠とすることを制限。解雇や懲戒など重大な判断に焦点を当てます。
  • AB 1883: Regulation of Workplace Surveillance Tools and Worker Data / 職場監視ツールと労働者データの規制 — 特定の監視ツール使用を禁止し、神経データの収集や感情状態の認識を行うAIを制限。違反1件につき従業員1人あたり最大500ドルの罰則と私的訴権を新設。雇用主に監視技術・データ慣行・ベンダーの監査を求める可能性があります。
  • SB 1149: Expanded Bereavement Leave / 忌引休暇の拡大 — 「指定された人」の死亡を対象に忌引休暇を拡大。血縁者や、家族関係に相当する関係にある人を含む。当該死亡について最大5日間の休暇を付与し、現行の対象範囲を広げます。
  • AB 1961: Easier Access to Workplace Violence Restraining Orders / 職場暴力接近禁止命令の取得容易化 — 職場や従業員全般に向けられた脅威に対し、雇用主が接近禁止命令を申請可能に。特定可能な従業員のグループや区分の保護を認める。個々の従業員を保護対象として指名する必要をなくし、信頼できる脅威への迅速な対応を容易にします。

ありがとうございます!山口憲和
山口 憲和  Norikazu (Kazu) Yamaguchi, MBA, SHRM-SCP

CA Insurance License: 0F78137

日本キャッシュフローコーチ協会認定コーチ 会員番号463

------------------------------------------------------

Philosophy LLC 

Philosophy Insurance Services 

609 Deep Valley Drive, WEST TOWER Suite 358

Rolling Hills Estates, CA 90274 

email: yamaguchi@yourphilosophy.net 

TEL  310-465-9173 (お電話は日時を予約していただけると大変助かります)

FAX 310-356-3352 

▼【アメリカ人事】月に1回の最新情報。無料メルマガ登録は今すぐ!下記のリンクから

https://philosophyllc.com/

------------------------------------------------------

Disclaimer: Please note that Norikazu Yamaguchi makes every effort to offer accurate, common-sense, ethical Human Resources management, employer, workplace, and Insurance information on this email, but Norikazu Yamaguchi is not an attorney, and the content on this email is not to be construed as legal advice.  When in doubt, always seek legal counsel. The information in the email is provided for guidance only, never as legal advice. We will not be responsible for any damages caused by using this information.

 

【このメールをご覧になる前に必ずご確認下さい】
免責事項:山口憲和は、このメールの中で正確で常識的、倫理的な人事管理、雇用者、職場、保険情報等を提供するために万全を期していますが、山口憲和は弁護士ではなく、このメールの内容は 法的助言として解釈できません。 法的助言は常に弁護士に相談してください。 この電子メール上の情報は、ガイダンスのためだけに提供されており、決して法的助言として提供されるものではありません。この情報を利用して損害が生じた場合でも弊社では責任を負いかねますのでご了承下さい。

 

★アメリカ人事Ⓡはあなたの会社がアメリカで「大谷翔平」選手になることを全力で支援します。

 

2026年8月11日火曜日

Botsitting AIの仕事が終わるのを座って待っている時間

 


Botsitting AIの仕事が終わるのを座って待っている時間

が新たな生産性の課題に。

待っている間にマルチタスクになって逆に生産性が落ちてしまうことも。

 

記事の中では
ASAPやPleaseという言葉を依頼に入れると逆に仕事が36%遅くなる。

私の場合、依頼にこの言葉、使ってしまいます。

スタッフに仕事を頼んでもなかなか上がってこない

返信がない

こんなことがよくある。

期日を設けない依頼は25%完了しない確率が上がるとか。

依頼しているのに返事がないので、何度もメールすると

マイクロマネジメントだと言われてキレてしまいます。

 

結局どうやったらよくなるのか?

 

▼タスクの依頼方法

 

  • 「please」「ASAP」「!!!」は避け、中立的で直接的な表現で依頼する(遅延率38%→31%に低下) →それでも7%だけか!
  • 感情的な催促より、シンプルに事実として依頼を伝える→これは習慣化できているな。

 

▼オーナーシップの明確化

 

  • 1タスク1担当者を徹底する(共同担当より時間内完了率が約70%高い)→これは通常分担させていない。
  • 可能なら本人に手を挙げてもらう(自発的タスクは70%以上が期限内完了)→そこまでスタッフいないです。

 

▼依頼の場所

 

  • 1対1のDMではなく、グループチャンネルで依頼する(期限内完了率44%向上)。周囲の目があることで責任感が働く→なるほど、アメリカ人でも周囲の目は効果ありか。

 

▼期限の設定

 

  • 必ず具体的な締切を付ける。期限なしのタスクは「永遠に完了しない」確率が2.5倍→見積等簡単な依頼にここまで〆切り設けられるかな。すぐやってもらうのが基本なんだが。。。。

 

▼AIとの付き合い方

 

「botsitting(AIのお守り)」に時間を取られすぎないよう、AI活用の範囲を見極める

→私の場合はマルチタスクになって混乱することが!今何をやっているのかフォーカスしないと。ADHD気味なので、なかなか難しい。
▼出所
https://www.hrdive.com/news/please-asap-slow-work-productivity/827565/?utm_source=Sailthru&utm_medium=email&utm_campaign=Issue:%202026-08-11%20HR%20Dive:%20Talent%20%5Bissue:87992%5D&utm_term=HR%20Dive:%20Talent

 

アメリカ人事・雇用の最新情報が届きます!
このニュースレターをお勧め下さい。ご登録はこちらからどうぞ

https://philosophyllc.com/

 

ニュースレターを登録して下さった方全員に

Amazonで発売中の【アメリカ人事】 基礎講座  シリーズ8

EEOCが某在米日系企業に日本人優遇を理由に 約2億円の罰金。(PHI出版) Kindle版 (4,800日本円) を登録者全員に無料でプレゼントしております。

https://www.amazon.co.jp/-/en/%E5%B1%B1%E5%8F%A3-%E6%86%B2%E5%92%8C-ebook/dp/B0H1TD4LTG/ref=sr_1_2?crid=12FP2G0RDV69B&dib=eyJ2IjoiMSJ9.69YgXlX7pQvlw5gBeWnN7Q_MS4lARzeiunm_CCJAApJQdsSEjax7DyO6CUPjGd5TGW14iV7EXpiz1PEJQjZwXPm25zWrdkAd18tJv5Xyar7Gn_UwEkXr9UVWL7DLW35S2BcmUm_ESUnCpoyawVOpSAcwhLZj3qi5wQgGRcWpNKsoj5Bj8ZeL4zcgdNGc7bTQ.nxClp-ODgcXWz_qpbTbgiHg2BLzcqx9yo4i1sjWiLXA&dib_tag=se&keywords=%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB+%E4%BA%BA%E4%BA%8B+%E5%B1%B1%E5%8F%A3%E6%86%B2%E5%92%8C&qid=1780615670&s=digital-text&sprefix=%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E4%BA%BA%E4%BA%8B+%E5%B1%B1%E5%8F%A3%E6%86%B2%E5%92%8C%2Cdigital-text%2C81&sr=1-2

 

ニュースレターのご登録は下記のリンクから!

https://philosophyllc.com/

 


(PHI出版)のアメリカ人事 シリーズは全12冊ございます。

https://www.amazon.co.jp/s?k=%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E4%BA%BA%E4%BA%8B+%E5%B1%B1%E5%8F%A3%E6%86%B2%E5%92%8C&i=digital-text&crid=12FP2G0RDV69B&sprefix=%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E4%BA%BA%E4%BA%8B+%E5%B1%B1%E5%8F%A3%E6%86%B2%E5%92%8C%2Cdigital-text%2C81&ref=nb_sb_noss

 

▼組織内の人間関係に悩んでいる方へ システムコーチングとは? https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:US:a4316927-a949-4bbb-b276-2850782e1514

 

----------------------------------------------------------------------------

Philosophy LLC 

Philosophy Insurance Services 

609 Deep Valley Drive, Suite 358

Rolling Hills Estates, CA 90274

email: yamaguchi@yourphilosophy.net 

TEL  310-465-9173 

FAX 310-356-3352 

http://philosophyllc.com/

Since 2009 -17th year anniversary-

https://www.linkedin.com/in/norikazuyamaguchi/

----------------------------------------------------------------------------

 

Disclaimer: Please note that Norikazu Yamaguchi makes every effort to offer accurate, common-sense, ethical Human Resources management, employer, workplace, and Insurance information on this email, blog, and movie. However, Norikazu Yamaguchi is not an attorney, and the content on this email, blog, and movie is not to be construed as legal advice. When in doubt, always seek legal counsel. The information provided is for guidance only, never as legal advice. We will not be responsible for any damages caused by using this information.

 

免責事項: 山口憲和は、このメール、ブログ、及び動画の中で正確で常識的、倫理的な人事管理、雇用者、職場、保険情報等を提供するために万全を期していますが、山口憲和は弁護士ではなく、これらの内容は法的助言として解釈できません。不確かな場合は、常に弁護士に相談してください。このメール、ブログ、動画上の情報はガイダンスのためだけに提供されており、決して法的助言として提供されるものではありません。この情報を利用して損害が生じた場合でも弊社では責任を負いかねますのでご了承下さい。

 

#アメリカ人事 #アメリカ #人事 #HR 

 

 

 

 

 

2026年8月6日木曜日

米国の組織の36%が「ピーナッツバター昇給」

米国の組織の36%が「ピーナッツバター昇給」

2026_08_06_giorgiotrovato4jbj6ashgoounsp

調査によると2026年には、米国の組織の36%が「ピーナッツバター昇給」として知られる一律昇給を実施しました。
しかし、2027年に一律昇給を計画していると答えた企業は32%にとどまりました。

下記リンクのPayscaleのレポートによるとこのような昇給形態はモチベーションの低下を招く可能性があり、25%の企業が2026年に「不十分な昇給による従業員の離職」を経験したと指摘しているとのこと。

https://www.hrdive.com/news/payscale-merit-increases-remain-popular-as-peanut-butter-raises-trend-do/827207/?utm_source=Sailthru&utm_medium=email&utm_campaign=Issue%3A+2026-08-06+HR+Dive%3A+Talent+%5Bissue%3A87857%5D&utm_term=HR+Dive%3A+Talent&fbclid=IwY2xjawTiUr1wZG9mBWV4dG4DYWVtAjExAHNydGMGYXBwX2lkEDIyMjAzOTE3ODgyMDA4OTIAAR6rXe7joEGjLCYFowSqc6FAhChoCHxgsVHdVf9tQiZvH97bF7CghbTwRgbdvw_aem_ggorPwIw4FJJU5nfe4l7hA

薄く均一に塗る、誰にとっても物足らない、という意味からピーナッツバターと言うとか。因みにパンにピーナッツバターを塗るのはとても伝統的なパンの食べ方。ここにイチゴジャムも塗って、ピーナッツバター&ジェリー(PB&J)にするのが一般的。アメリカでは果汁ベースのジャムを「ジェリー」と呼びます。

アメリカのピーナッツバターって日本のみたいに水飴が入ってないから甘くないんですよねー。ジャムと合わせるとちょうどよい感じ。
ベーグルとかにもPB&J塗って売ってたりします!



▼組織内の人間関係に悩んでいる方へ システムコーチングとは? https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:US:a4316927-a949-4bbb-b276-2850782e1514

 

アメリカ人事・雇用の最新情報が届きます!
このニュースレターをお勧め下さい。ご登録はこちらからどうぞ

https://philosophyllc.com/

 

ニュースレターを登録して下さった方全員に

Amazonで発売中の【アメリカ人事】 基礎講座  シリーズ8

EEOCが某在米日系企業に日本人優遇を理由に 約2億円の罰金。(PHI出版) Kindle版 (4,800日本円) を登録者全員に無料でプレゼントしております。

https://www.amazon.co.jp/-/en/%E5%B1%B1%E5%8F%A3-%E6%86%B2%E5%92%8C-ebook/dp/B0H1TD4LTG/ref=sr_1_2?crid=12FP2G0RDV69B&dib=eyJ2IjoiMSJ9.69YgXlX7pQvlw5gBeWnN7Q_MS4lARzeiunm_CCJAApJQdsSEjax7DyO6CUPjGd5TGW14iV7EXpiz1PEJQjZwXPm25zWrdkAd18tJv5Xyar7Gn_UwEkXr9UVWL7DLW35S2BcmUm_ESUnCpoyawVOpSAcwhLZj3qi5wQgGRcWpNKsoj5Bj8ZeL4zcgdNGc7bTQ.nxClp-ODgcXWz_qpbTbgiHg2BLzcqx9yo4i1sjWiLXA&dib_tag=se&keywords=%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB+%E4%BA%BA%E4%BA%8B+%E5%B1%B1%E5%8F%A3%E6%86%B2%E5%92%8C&qid=1780615670&s=digital-text&sprefix=%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E4%BA%BA%E4%BA%8B+%E5%B1%B1%E5%8F%A3%E6%86%B2%E5%92%8C%2Cdigital-text%2C81&sr=1-2

 

ニュースレターのご登録は下記のリンクから!

https://philosophyllc.com/

 


(PHI出版)のアメリカ人事 シリーズは全12冊ございます。

https://www.amazon.co.jp/s?k=%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E4%BA%BA%E4%BA%8B+%E5%B1%B1%E5%8F%A3%E6%86%B2%E5%92%8C&i=digital-text&crid=12FP2G0RDV69B&sprefix=%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E4%BA%BA%E4%BA%8B+%E5%B1%B1%E5%8F%A3%E6%86%B2%E5%92%8C%2Cdigital-text%2C81&ref=nb_sb_noss

 

----------------------------------------------------------------------------

Philosophy LLC 

Philosophy Insurance Services 

609 Deep Valley Drive, Suite 358

Rolling Hills Estates, CA 90274

email: yamaguchi@yourphilosophy.net 

TEL  310-465-9173 

FAX 310-356-3352 

http://philosophyllc.com/

Since 2009 -17th year anniversary-

https://www.linkedin.com/in/norikazuyamaguchi/

----------------------------------------------------------------------------

 

Disclaimer: Please note that Norikazu Yamaguchi makes every effort to offer accurate, common-sense, ethical Human Resources management, employer, workplace, and Insurance information on this email, blog, and movie. However, Norikazu Yamaguchi is not an attorney, and the content on this email, blog, and movie is not to be construed as legal advice. When in doubt, always seek legal counsel. The information provided is for guidance only, never as legal advice. We will not be responsible for any damages caused by using this information.

 

免責事項: 山口憲和は、このメール、ブログ、及び動画の中で正確で常識的、倫理的な人事管理、雇用者、職場、保険情報等を提供するために万全を期していますが、山口憲和は弁護士ではなく、これらの内容は法的助言として解釈できません。不確かな場合は、常に弁護士に相談してください。このメール、ブログ、動画上の情報はガイダンスのためだけに提供されており、決して法的助言として提供されるものではありません。この情報を利用して損害が生じた場合でも弊社では責任を負いかねますのでご了承下さい。

 

#アメリカ人事 #アメリカ #人事 #HR 

 

 

 

 

 



 

2026年7月3日金曜日

アメリカ人事 | ソーシャルセキュリティオフィス(SSA)から届いた1通のメール ― 「65歳からの減税」の正体と、今からできる3つのアクション

 


アメリカ人事 | ソーシャルセキュリティオフィス(SSA)から届いた1通のメール ― 「65歳からの減税」の正体と、今からできる3つのアクション

1. はじめに:独立記念日の週末に届いたメール

今週、ソーシャルセキュリティ局(SSA)から「Making Life More Affordable for America's Seniors(アメリカのシニアの暮らしをもっと豊かに)」と題したメールを受け取った方も多いのではないでしょうか。建国250周年を迎える独立記念日に合わせた配信で、「65歳以上のアメリカ人が手元により多くのお金を残せる減税が実現した」「この減税をまだ活用していない方は、IRSのサイトで資格要件を確認してほしい」という内容です。

「自分にも関係があるの?」「何をすればいいの?」——このメールを読んで疑問を持たれた方のために、メールが指している制度の正体と、2026年7月の今だからこそできるアクションを、日本語で分かりやすく整理します。

2. まず正確に:メールが指す「減税」の正体

SSAのメールでは「Working Families Tax Cuts Act」という呼び名が使われていますが、これは2025年7月4日に成立した税法、通称 One, Big, Beautiful Bill Act(OBBBA) のことです。

ここで1つ、正確に押さえておきたいポイントがあります。メールの文面からは「ソーシャルセキュリティ給付への課税がなくなった」ような印象を受けますが、法律上、給付そのものが非課税になったわけではありません。実際に導入されたのは、65歳以上の方を対象とした新しい所得控除「シニア向け特別控除(Enhanced Deduction for Seniors)」です。結果として給付に課税されていた方の税負担が軽くなるケースは多いものの、控除額は所得によって変わり、誰もが一律に恩恵を受けるわけではありません。制度の中身を正しく知ることが、活用の第一歩です。

3. 「シニア向け特別控除」の概要:最大12,000ドル

  • 控除額:対象者1人につき6,000ドル。夫婦合算申告で夫婦ともに要件を満たす場合は合計12,000ドル
  • 適用期間:2025年分から2028年分まで(控除額・所得基準は2026年分も据え置き)
  • 年齢要件:その課税年度の最終日(12月31日)までに65歳に達していること
  • 所得制限:MAGI(※注)が75,000ドル(夫婦合算150,000ドル)を超えると段階的に減額
  • 申告方式:標準控除でも項目別控除でも利用可能
  • その他の要件:対象者の有効なSSNの記載が必要。既婚者は夫婦合算申告(MFJ)が必須(個別申告では請求不可)

減額は、MAGIが基準額を超えた部分の6%を6,000ドルから差し引く計算です。単身でMAGI 175,000ドル以上、夫婦合算で250,000ドル以上になるとゼロになりますが、その手前なら部分的に控除が残ります。申告時は Schedule 1-A(Form 1040) で計算・請求します。

※注:ここでいうMAGIは、Form 1040のAGI(調整後総所得)に一部の除外所得(外国勤労所得の除外分など)を加算したもので、大多数の方にとってはAGIとほぼ同じ数字です。

出典:IRS

4. SSAのメールで「取り忘れ」に気づいた方へ:まだ間に合います

メールには「まだ活用していない方は次の申告シーズンに向けて確認を」とありますが、実は来年まで待つ必要はありません。状況別に、今できることがあります。

  • 申告期限を延長中の方:Form 4868を提出済みなら、2025年分の申告期限は2026年10月15日です。Schedule 1-Aでこの控除を忘れずに請求してください。
  • 既に申告を済ませた方:Schedule 1-Aは今年新設された様式のため、控除の取り忘れが起こりやすい初年度でした。心当たりのある方は、提出済みのForm 1040にSchedule 1-Aが添付されているか控えを確認し、取り忘れていれば修正申告(Form 1040-X)で還付請求できます。期限は原則、当初の申告期限から3年以内です。

5. 「働くシニア」のEITC ― ただし対象者は限られます

定年後も働いている方に関係する勤労所得税額控除(EITC)にも触れておきます。ただし、65歳以上の方すべてが対象になるわけではありません。

扶養する適格児童(qualifying child)がいない場合、EITCには「年末時点で25歳以上65歳未満」という年齢要件があります。したがって、65歳以上の単身者や、夫婦ともに65歳以上で適格児童がいないご夫婦は、原則として対象外です。一方、次のケースでは対象になる可能性があります。

  • 同居している孫など、EITC上の適格児童を扶養している場合(申告者本人の年齢上限なし)
  • 夫婦合算申告で、少なくとも一方の配偶者が年末時点で25歳以上65歳未満の場合

所得上限は申告ステータスと適格児童の人数で変わります(2025年分:適格児童なし 単身19,104ドル/夫婦合算26,214ドル 〜 適格児童3人以上 単身61,555ドル/夫婦合算68,675ドル。投資所得上限11,950ドル)。要件を満たしていたのに請求しなかった場合は、過去3年分まで遡って請求可能です。

出典:IRS

6. 無料の申告支援:10月の延長期限に向けて早めの確認を

  • VITA/TCE:低・中所得層や60歳以上の方を対象とした無料申告支援。電話窓口:800-906-9887。多くの拠点は申告シーズン(例年1月下旬〜4月)中心の運営のため、10月期限で申告予定の方はIRSのサイト検索ツールで開設状況を早めに確認してください。
  • AARP Foundation Tax-Aide:電話窓口:888-AARP-NOW(888-227-7669)。こちらもシーズン中心の運営です。

シーズン外で支援が見つからない場合は、修正申告や延長申告に対応できるCPAへの相談も選択肢です。

7. 年の折り返し地点:2026年分の「MAGI管理」と源泉徴収チェック

この控除は2028年分まで続きます。控除を満額受けられるかを決めるMAGIは、年末までの行動で変わります

  • 所得の平準化:Roth転換やキャピタルゲインの実現タイミング次第で、MAGIが閾値を超えることがあります。年内の大きな取引は控除への影響も含めて検討を。
  • 源泉徴収の見直し:給付を受けながら賃金収入がある方は、源泉徴収の過不足が翌年のタックスビルに直結します。W-4や給付からの源泉徴収を年央で調整しておくと安心です。
  • 書類管理:「My Social Security」アカウント(SSA.gov/myaccount)を作成しておけば、SSA-1099等をオンラインでいつでも再発行できます。

8. なぜこのメールが「届いた人」と「届かない人」がいるのか

今回のメールは、全国民に一斉配信されたものではありません。SSAからのお知らせメールは、主にMy Social Securityアカウントの保有者や、SSAのメール配信に登録している方に届きます。同様に、IRSも「Tax Tips」というメール配信サービスを提供しており、こちらもIRS.govで自分から購読登録した人にのみ届く仕組みです。

つまり、税制の重要な変更やその活用法は、登録していない大多数の方には「向こうから」は届きません。逆に言えば、登録さえしておけば、控除の新設・締め切り・詐欺への注意喚起といった一次情報を無料でいち早く受け取れます。

登録方法(無料・英語)

【重要】政府機関を装った詐欺メールにご注意ください

一方で、必ず知っておいていただきたい注意点があります。SSAやIRSが、還付金の受け取り、給付の停止、口座情報の確認といった「あなた個人の内容」について、メールで連絡し個人情報の入力を求めることはありません。 今回の本物のメールも、一般的なお知らせのみで、個人情報の入力や支払いは一切求めていません。「給付が停止されます」「今すぐ確認を」といったメールやテキストメッセージは、シニア世代を狙ったフィッシング詐欺の典型です。リンク先が「.gov」で終わらないものは特に警戒し、心当たりのないメールのリンクは開かずに削除してください。

9. まとめ:この夏にやるべき4つのアクション

  1. 延長申請中の方 → 10月15日の期限前に、Schedule 1-Aで6,000ドル控除を忘れずに請求
  2. 申告済みの方 → 控えを確認し、取り忘れがあればForm 1040-Xで還付請求
  3. すべての65歳以上の方 → 2026年分に向けて、MAGIと源泉徴収を年央チェック
  4. 情報収集の仕組みづくり → SSA・IRSの公式配信に登録して一次情報が「届く側」に回る。ただし個人情報を求めるメールは詐欺と心得る

SSAからの1通のメールは、読み流せばただの広報です。しかし正しく読み解けば、ご自身の資産を守る「戦略的なアクション」の出発点になります。

「あなたはこの6,000ドルの控除を、どのような豊かな未来のために活用しますか?」


※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、税務アドバイスではありません。弊社(Philosophy, LLC)は税務の専門家ではありませんので、個別の申告・修正申告については、必ずCPA(公認会計士)等の税務専門家にご確認ください。


 

▼組織内の人間関係に悩んでいる方へ システムコーチングとは? https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:US:a4316927-a949-4bbb-b276-2850782e1514

 

アメリカ人事・雇用の最新情報が届きます!
このニュースレターをお勧め下さい。ご登録はこちらからどうぞ

https://philosophyllc.com/

 

ニュースレターを登録して下さった方全員に

Amazonで発売中の【アメリカ人事】 基礎講座  シリーズ8

EEOCが某在米日系企業に日本人優遇を理由に 約2億円の罰金。(PHI出版) Kindle版 (4,800日本円) を登録者全員に無料でプレゼントしております。

https://www.amazon.co.jp/-/en/%E5%B1%B1%E5%8F%A3-%E6%86%B2%E5%92%8C-ebook/dp/B0H1TD4LTG/ref=sr_1_2?crid=12FP2G0RDV69B&dib=eyJ2IjoiMSJ9.69YgXlX7pQvlw5gBeWnN7Q_MS4lARzeiunm_CCJAApJQdsSEjax7DyO6CUPjGd5TGW14iV7EXpiz1PEJQjZwXPm25zWrdkAd18tJv5Xyar7Gn_UwEkXr9UVWL7DLW35S2BcmUm_ESUnCpoyawVOpSAcwhLZj3qi5wQgGRcWpNKsoj5Bj8ZeL4zcgdNGc7bTQ.nxClp-ODgcXWz_qpbTbgiHg2BLzcqx9yo4i1sjWiLXA&dib_tag=se&keywords=%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB+%E4%BA%BA%E4%BA%8B+%E5%B1%B1%E5%8F%A3%E6%86%B2%E5%92%8C&qid=1780615670&s=digital-text&sprefix=%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E4%BA%BA%E4%BA%8B+%E5%B1%B1%E5%8F%A3%E6%86%B2%E5%92%8C%2Cdigital-text%2C81&sr=1-2

 

ニュースレターのご登録は下記のリンクから!

https://philosophyllc.com/

 

(PHI出版)のアメリカ人事 シリーズは全12冊ございます。

 

https://www.amazon.co.jp/s?k=%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E4%BA%BA%E4%BA%8B+%E5%B1%B1%E5%8F%A3%E6%86%B2%E5%92%8C&i=digital-text&crid=12FP2G0RDV69B&sprefix=%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E4%BA%BA%E4%BA%8B+%E5%B1%B1%E5%8F%A3%E6%86%B2%E5%92%8C%2Cdigital-text%2C81&ref=nb_sb_noss

 

----------------------------------------------------------------------------

Philosophy LLC 

Philosophy Insurance Services 

609 Deep Valley Drive, Suite 358

Rolling Hills Estates, CA 90274

email: yamaguchi@yourphilosophy.net

TEL  310-465-9173

FAX 310-356-3352

http://philosophyllc.com/

Since 2009 -17th year anniversary-

https://www.linkedin.com/in/norikazuyamaguchi/

----------------------------------------------------------------------------

 

Disclaimer: Please note that Norikazu Yamaguchi makes every effort to offer accurate, common-sense, ethical Human Resources management, employer, workplace, and Insurance information on this email, blog, and movie. However, Norikazu Yamaguchi is not an attorney, and the content on this email, blog, and movie is not to be construed as legal advice. When in doubt, always seek legal counsel. The information provided is for guidance only, never as legal advice. We will not be responsible for any damages caused by using this information.

 

免責事項: 山口憲和は、このメール、ブログ、及び動画の中で正確で常識的、倫理的な人事管理、雇用者、職場、保険情報等を提供するために万全を期していますが、山口憲和は弁護士ではなく、これらの内容は法的助言として解釈できません。不確かな場合は、常に弁護士に相談してください。このメール、ブログ、動画上の情報はガイダンスのためだけに提供されており、決して法的助言として提供されるものではありません。この情報を利用して損害が生じた場合でも弊社では責任を負いかねますのでご了承下さい。

 

#アメリカ人事 #アメリカ #人事 #HR

 

 

 

 

 

 

アメリカ人事、静かに、しかし確実に転換点を迎えている=ルーカス委員長のビデオより

  アメリカ人事、静かに、しかし確実に転換点を迎えている=ルーカス委員長のビデオより ――EEOCの「反米バイアス」摘発強化から見えてくるもの 先日、EEOC(米国雇用機会均等委員会)のアンドレア・ルーカス委員長が、LinkedInとX(旧Twitter)に自ら動画を投稿し...