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4月, 2025の投稿を表示しています

アメリカ人事|なぜTESLAは儲かっていないのか?

  アメリカ人事|なぜTESLAは儲かっていないのか? 経営者の悩みの75%は「お金」と「人」の問題だと言われている。 アメリカ人事では、ビジョンを達成するための人材戦略と、持続可能なキャッシュフローを両立させることが成功のカギである。 今回は、EV業界の象徴ともいえるTESLA(テスラ)が、なぜ株式市場での存在感に反して「儲かっていない」と言われるのか。その構造的課題に迫る。 【TESLAとはどんな会社か?】 TESLA(テスラ・モーターズ)は2003年創業の電気自動車(EV)メーカーである。CEOイーロン・マスク氏のもと、「世界を持続可能なエネルギーに移行させる」というミッションを掲げてきた。 主力製品はModel 3、Model YなどのEVに加え、ソーラー、蓄電池、AI開発にも事業領域を広げている。 2020年以降のEVブームと株式分割によって、時価総額が一時1兆ドルに達するなど、破格の評価を受けてきた。 【2025年第1四半期の業績ハイライト】 売上高(Revenue): 213億ドル(前年同期比9%減) → 値下げにより販売台数は増加したものの、売上は減少。 粗利益(Gross Profit): 約39億ドル(粗利益率約18.3%) → 昨年同時期の粗利益率は19.3%であり、利益率がさらに低下。 営業利益(Operating Profit): 約11億ドル(営業利益率約5.2%) → 営業利益率は前年同期の11.4%から大幅に減少。 純利益(Net Income): 約11億ドル(純利益率約5.2%) → フリーキャッシュフローは約4.4億ドルで、前年同期の約22億ドルから大きく縮小。 出所: https://www.appeconomyinsights.com/p/tesla-the-great-slump これらの数値からも明らかなように、TESLAの2025年第1四半期は、売上・利益率・キャッシュフローのすべてで苦戦を強いられている。 【TESLAの「儲からない」構造的要因】 ① 利益を犠牲にした価格競争戦略 TESLAは2023年以降、主力車種の大幅な値下げを実施してきた。Model Yは一部市場で30%以上値下げされ、価格競争に拍車がかかっている。 販売台数は維持しているものの、1台あたりの利益が急減しており、粗利益率の低下に直結して...

アメリカ人事 | アメリカの日系企業に問われるDEIの再設計

  アメリカ人事 | アメリカの日系企業に問われるDEIの再設計 ~インド企業の地に足の着いた改革に学ぶ~ アメリカにおけるDEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)政策が政治的緊張を帯びる中、日系企業はこれまで以上に戦略的なスタンスを求められている。トランプ大統領が2025年に発した大統領令により、連邦政府関連企業におけるDEI施策の禁止が明文化され、大手企業の間でもDEIプログラムの見直しが相次いでいる。 このような逆風の中で、DEIにどう向き合うべきか。そのヒントは、アメリカではなく、インド企業の変革にこそ見出せる。 インド企業が見せた“目的志向”のDEI 米SHRMが報じたところによれば、インドではここ10年で「チェックリスト型DEI」から「文化として根付いたDEI」へと進化を遂げている。特筆すべきは、女性の復職支援、LGBTQ+や障がい者へのインターン機会提供、宗教や出自を問わない採用方針、そして管理職へのインクルージョン教育など、制度ではなく現場の意識と文化の変革に主眼が置かれている点である。 企業の目的が「良い人材を活かす」ことにある以上、その前提として、多様な人材が安心して能力を発揮できる環境を整えるのは、当然の経営課題である。インド企業は、これを“政治色のない実務”として冷静に取り組んでいる。 出所:SHRM “Indian Companies Make ‘Remarkable Transformation’ with I&D” www.shrm.org/topics-tools/employment-law-compliance/indian-companies-make-remarkable-transformation-with-id 日系企業が取るべき“現実的”DEIの処方箋 アメリカに拠点を持つ日系企業もまた、政治的な配慮を要する環境下で、次のような“実務志向”のDEIへと舵を切るべきである。 1. 「多様性」ではなく「公平性のある機会提供」にフォーカスする 「DEI」というワードを表に出すことなく、スキルベース採用やバイアス除去の仕組みを裏方で機能させることは十分可能である。採用評価シートの見直し、性別や出自に関係ない昇進基準の明確化などは、アメリカでも合法的かつ効果的な対応策である。 2. インクルージョン...

アメリカ人事 | 関税不況時代にレイオフは処方箋か?~Saks Globalが約450名レイオフ~

   アメリカ人事 | 関税不況時代にレイオフは処方箋か?~Saks Globalが約450名レイオフ~ ― Saks Globalの事例から考える、雇用を守る経営戦略 2025年4月、Saks Globalがテネシー州にある物流センターを閉鎖し、約450名をレイオフすると報じられた。このニュースは、単なる一企業の構造改革ではなく、アメリカの百貨店業界全体が直面している経営課題を象徴する出来事として注目に値する。 背景にあるのは、トランプ政権下で再導入された中国からの輸入品に対する関税(タリフ)である。Moody’sの分析によれば、こうした関税措置は百貨店業界の税引前利益(EBIT)を10%押し下げる見通しだとされており、特にSaksやKohl’sといった中価格帯から高価格帯を扱う企業が影響を受けやすいとされている。 しかし、ここで問いたいのは、「レイオフは本当に最善の対策なのか?」という点である。 短期的コスト削減と引き換えに失うもの 確かにレイオフは即時的なコスト削減策であり、財務的な応急処置としては一定の効果を持つ。しかしSaksのようにラグジュアリーブランドとしての顧客体験を重視する企業にとって、従業員は単なる労働力ではない。彼らはブランドの顔であり、接客やスタイリングを通じて顧客と感情的な関係を築く存在である。彼らを一斉に削減することは、ブランドへの信頼喪失やサービスの質の低下を招き、結果的に売上減少につながるリスクがある。 雇用を守る3つの代替案 レイオフ以外にも、企業が取るべき選択肢は存在する。以下にその一部を示す。 1.ベンダーとの協調的再交渉 報道によれば、Saksは支払いの遅延や強引な条件変更によってサプライヤーの信頼を失っている。これに代わり、誠実な情報開示と双方向の交渉に基づいた協調的なコスト見直しを行えば、関係性を維持しながらコスト調整が可能である。 2.短時間勤務や一時的休業(furlough)の活用 需要が一時的に落ち込んでいる場合、レイオフではなく短時間勤務制度や無給休暇制度の導入により、人材を維持したまま一時的な支出削減を行うことができる。特に一部の州では、こうした制度に対する助成金や失業保険の支援も受けられる。 3.物流・販売戦略の再設計 関税の影響を受けにくい販路や商品の見直し、あるいはeコマースや店舗受け取り...

アメリカ人事【雇用主が節約するための具体的な施策】

  アメリカ人事【雇用主が節約するための具体的な施策】 1. FSA(Flexible Spending Account)やHSA(Health Savings Account)の活用を促進する 社員が 税引き前の給与を医療目的に使えるようにする制度 を導入・推進することで、 雇用主・従業員双方に税制上のメリット が生まれます。 雇用主側は、FICA(社会保障税とメディケア税)の 課税対象となる給与総額が減少 するため、 雇用主負担の税金も減る ことになります。 例えば、1人あたり$2,500をFSAに拠出した場合、約7.65%(FICA相当)の雇用主負担が節約可能 → 年間で約$191の節税になります。 2. FSAの「未使用資金の没収(forfeiture)」を抑える 多くの従業員がFSAの「 使いきりルール (use-it-or-lose-it)」を理解しておらず、資金を使い残して雇用主に戻ってくることがあります。 これは一見、雇用主にとっては利益のように見えますが、 制度自体の利用が進まない と、 全体としての節税効果が薄れる ため、 社員に「FSAで何が買えるか」について定期的に教育・周知する (例:年末に「使い忘れ防止」メールを送る) FSA Storeなどの対象商品リンクを社内イントラで紹介 社内ワークショップやウェビナーでHSA/FSAの使い方を解説 などの啓発活動を行うことで、 利用率が高まり、全体としての税制メリットが最大化 します。 3. HSAの導入を検討する(特に中長期的なコスト削減に有効) HSAは従業員にとって 高額医療費の備えとして貯蓄できる制度 であり、かつ未使用分を翌年以降も 繰り越し可能 であるため人気があります。 高控除額型プラン(High-Deductible Health Plan:HDHP)とセットで提供することで、 保険料自体を抑えることも可能 です。 雇用主にとっては、 医療保険の企業負担分の圧縮 につながる可能性があります。 4. 従業員がFSA/HSA対象商品を最大限に活用できるようにする 提携ドラッグストアやオンラインショップ(例:FSA Store、AmazonのFSA/HSAセクション)へのアクセスを案内し、 従業員が簡単に対象商品を把握できる仕組み を提供します。 対象商品例:日焼け止め、救急箱、...

アメリカ人事 | なぜあの会社は儲かっているのか?TSMC編

 アメリカ人事 | なぜあの会社は儲かっているのか?TSMC編 経営者の悩みの75%はお金と人の問題と言われます。アメリカ人事ではビジョンを達成するための人材投資とそれを可能にするお金の流れを創り出すことが成功の鍵ではないでしょうか? https://www.appeconomyinsights.com/p/pro-this-week-in-visuals-e6f?img=https%3A%2F%2Fsubstack-post-media.s3.amazonaws.com%2Fpublic%2Fimages%2Fdf1bb852-a036-44e6-99a6-4c8e70e9160e_2744x1539.png&open=false 【TSMCとはどんな会社か?】 TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company/台湾積体電路製造股份有限公司)は、1987年に設立された世界最大の半導体受託製造(ファウンドリ)専業企業です。 Apple、NVIDIA、AMDなどの顧客が設計した最先端チップを、TSMCが自社の工場で製造する「製造専門業者」として知られています。自社ブランド製品は持たず、技術力と設備投資によって競争優位を築いています。 【2025年第1四半期の業績ハイライト】 ・売上高(Revenue):255億ドル(前年同期比35パーセント増) ・粗利益(Gross Profit):140億ドル(粗利益率55.6パーセント)  → 材料費や製造原価を差し引いた利益であり、非常に高水準です。これは、TSMCの高度な設備投資と製造技術力によるコスト競争力の高さを示しています。 ・営業利益(Operating Profit):110億ドル(営業利益率約43パーセント)  → 粗利益から研究開発費や販売管理費を差し引いた利益です。巨額のR&D支出がありながらも高い営業利益率を維持しています。 ・経常利益/純利益(Net Income):110億ドル(純利益率約43パーセント)  → 営業外収益や税引後の最終利益で、営業利益と同水準にあることから、財務体質が極めて健全であることがわかります。 【成長の背景と要因】 ・売上の59パーセントがHPC(高性能コンピューティング、AI関連)に関係するチップからの収益で...

アメリカ人事 | 65歳で健康保険打ち切り?年齢差別と企業の責任

 アメリカ人事 | 65歳で健康保険打ち切り?年齢差別と企業の責任 年齢による差別は、アメリカでは明確に違法である。にもかかわらず、「65歳になったら退職」「65歳以上はメディケアを使えばよい」という考えが、無意識のうちに人事慣行に染みついていないだろうか。 2025年4月10日、映画館チェーンのAllen Theatres社が、高齢従業員への差別を理由とするEEOC(米国雇用機会均等委員会)の訴訟で25万ドルの和解金を支払うことが発表された(EEOC v. Allen Theatres)。 同社は、73歳の長年勤務していたマネージャーに対し、COVID-19後の再開時に復職を認めず、また65歳になった従業員の健康保険の提供を停止し、メディケアへの移行を当然視していたという。さらには、65歳以上の従業員への給与も低く設定されていた。 “It violates federal anti-discrimination law for managers or any corporate officers to force workers over the age of 40 to involuntarily retire because of their age.” ― Mary Jo O’Neill, EEOC 出典: https://www.hrdive.com/news/theater-chain-settles-lawsuit-alleging-it-halted-workers-health-insurance/745424/ 人事担当者への示唆:年齢に基づく制度運用の見直しを ・年齢による福利厚生の制限は原則NG 65歳以上になった従業員に対し、「メディケアがあるから」として企業の健康保険の提供を打ち切ることは、年齢差別(ADEA違反)に該当するリスクが高い。福利厚生制度は全従業員に平等に提供すべきである。 ・例外:従業員が20名未満の企業はMedicareがPrimary ただし、従業員が20名未満の会社では、MedicareがPrimary(主たる保険)となり、会社のグループ保険はSecondary扱いとなる。この場合、従業員が本人の意思でグループ保険を辞退し、Medicareのみを利用することは合法的に認められている。重要なのは、会社が辞退を強制...

アメリカ人事|年収10万ドルはもはや「成功の証」ではない

  アメリカ人事|年収10万ドルはもはや「成功の証」ではない かつてアメリカにおいて「10万ドル」は、経済的安定と成功を象徴する年収の“マジックナンバー”とされてきた。だが、その神話はもはや通用しない現実が、HR領域においても無視できなくなっている。 Lending Treeが発表した最新のレポートによると、全米の主要都市圏のうち25地域において、年収10万ドルでは3人家族の基本的な生活費をまかないきれないことが明らかになった。たとえば、カリフォルニア州サンノゼでは、家賃、育児費、交通費などを含めた基本的支出を差し引いた後、毎月2,207ドルの赤字になるという。 このレポートでは、負債返済などを含めれば、実際に赤字となる都市はさらに増える可能性があると指摘されている。 “For generations of Americans, $100,000 has long been a magic number... However, that has changed dramatically in many of the nation’s biggest metros.” ― Lending Tree Report 出典: https://www.hrdive.com/news/100k-isnt-a-high-enough-salary-for-a-family/745597/ また、米国労働者の73%が「生活費以外の支出が困難」と感じており、12%は「生活必需品すら常に賄えない」と回答したという調査(Resume Now社、2025年1月)もある。さらにZety社の調査(2025年2月)では、半数の労働者が「現在の収入では家庭を持つ、あるいは家族を増やすことができない」と感じており、40%が「老後資金を貯められない」と回答している。 人事担当者への示唆 ・ 給与設計は“額面”ではなく“実質価値”で 都市部では、従業員が生活コストの高さに直面しており、給与の絶対額よりも「生活実感」に焦点を当てた設計が求められる。 ・ 福利厚生の再定義が急務 給与に加えて、住宅補助、育児支援、通勤費補助など「実質的な負担軽減」策の拡充は、リテンションにも直結する。 ・ 採用メッセージも現実に即した訴求を 「競争力ある給与」だけでは響かない。地域の生活コストに応じた説明や、長期的な...

アメリカ人事「静かな崩壊」が日本企業をむしばむ──目に見えない離職予備軍への処方箋

  アメリカ人事「静かな崩壊」が日本企業をむしばむ──目に見えない離職予備軍への処方箋 ここ数年、「静かな退職(Quiet Quitting)」や「リスキリング」「ウェルビーイング」など、働き方や職場意識に関する新たな用語がアメリカから日本に次々と上陸している。そして今、注目すべき新たなキーワードが登場した――「静かな崩壊(Quiet Cracking)」である。 この言葉は、米国の人材開発企業TalentLMSによって報告されたもので、従業員が表向きは就業を継続しているものの、心の中では仕事に対するモチベーションを失い、生産性が低下し、ひそかに退職を検討している状態を指す。 日本企業においても、「辞めるとは言っていないが、心はすでに離れている」従業員が存在しているのではないか。これは単なるエンゲージメントの低下ではなく、組織の根幹を脅かす“静かな危機”である。 背景にあるのは「学ばない組織」と「聞かない上司」 アメリカの調査によれば、「研修や教育機会を過去1年間受けていない従業員」は、自身の仕事に対して不安を抱く可能性が140%も高まるという結果が出ている。これは日本においても同様である。かつてのOJT(On the Job Training)任せの風土では通用しなくなり、スキルアップの機会を与えないことが、本人の自信喪失と離職意識を加速させる時代となった。 また、日本企業で根深い問題となっているのが「上司との断絶」である。TalentLMSの調査では、「上司が自分の声を聞いていない」と感じている従業員の割合が47%にも達しており、日本でも上司からの一方的な指示命令に従うだけの職場環境では、心理的安全性が育まれない。 「頑張らない若者」ではなく、「壊れかけた職場」に目を向けるべき 若手社員が積極的に手を挙げない、意見を出さない、主体的に動かない──こうした声を耳にすることは多い。しかし、それを「最近の若者は受け身だ」と一方的に片づけることは危険である。その背後に、すでに“静かな崩壊”が始まっている可能性があるからだ。 たとえば、リモートワークの導入により上司との接点が激減した中で、誰にも悩みを相談できない若手社員。過剰な成果主義の中で、フィードバックもなく努力が報われないと感じる中堅社員。こうした日々の積み重ねが、目に見えないかたちで退職予備軍を増やしてい...

アメリカ人事|オラクル、販売員の歩合給をめぐる10年越しの訴訟で1,550万ドルの和解へ

  アメリカ人事|オラクル、販売員の歩合給をめぐる10年越しの訴訟で1,550万ドルの和解へ ― カリフォルニア州の賃金法違反を原告が主張 オラクルは、同社がカリフォルニア州の歩合制営業社員に対して州の賃金法に違反したとして、元社員2名が提起した訴訟について、1,550万ドル(約23億円)の和解に合意したと、原告側の弁護士が水曜日に発表しました。 「 Abrishamcar v. Oracle America, Inc. 」の原告は、2015年にカリフォルニア州私的検察官法(PAGA)に基づき訴訟を提起し、オラクルの歩合賃金ポリシーが州の労働法規に違反しており、獲得済みの歩合賃金を違法に控除していたと主張しました。加えて、すべての獲得賃金を支払わなかったこと、不正確な賃金明細の提供、違法な機密保持契約の強要も訴えの対象となっていました。 原告は、カリフォルニア州サンマテオ郡の高等裁判所に対し、和解案の承認を求める申し立てを行っています。HR Diveが入手した和解文書によれば、オラクルは訴状に記載された全ての主張、責任、違法行為を否定しています。 洞察: オラクルを相手取ったこの訴訟は約10年にわたって続いており、今回の和解案によって5,000人以上の現・元社員に対し、罰則金の支払いがなされる見込みです(原告側の声明による)。 訴状によると、オラクルは歩合制営業社員に対し、雇用開始時に署名済みの歩合契約書を提供しておらず、カリフォルニア州法で義務付けられているタイミングで提供も署名も行われませんでした。さらに、歩合の計算方法や支払方法についても明記されていなかったとされています。 また、オラクルは事業コストを社員に転嫁する目的で、歩合賃金から違法に控除する権利を保持していたとも主張されています。その結果、原告らに対しては、稼得賃金の総額を明示した正確な明細書が提供されなかったとされています。 「この和解は、何年もの歳月をかけてこの結果を得るために尽力してくださった依頼人の献身の証です」と、原告側の共同主任弁護士であるValerian Lawの代表弁護士、シンイン・バレリアン氏は述べました。 この訴訟は、PAGA(カリフォルニア州私的検察官法)に基づいて提起されました。PAGAは、社員が自分自身や他の現・元社員を代表して民事制裁金の回収を求める訴訟を提起できる...

アメリカ人事 | ドジャースに学ぶ、インクルーシブで高成果なチーム文化のつくり方

  アメリカ人事 | ドジャースに学ぶ、インクルーシブで高成果なチーム文化のつくり方 HRの世界では、「インクルーシブ(包括的)で協働的、そして高い成果を上げる文化づくり」がよく語られる。しかし、その理想的な事例は、会議室よりも球場で見つかるかもしれない。MLB(メジャーリーグベースボール)で最も成功し、先進的な球団のひとつであるロサンゼルス・ドジャースは、スポーツの枠を超えて、組織文化における貴重なヒントを私たちに提供してくれる。 最近話題になったのは、二度のサイ・ヤング賞を受賞したブレイク・スネル投手と、ルーキーの佐々木朗希投手との間で交わされた長い会話。試合中にもかかわらず、スネルは熱心に佐々木に話しかけ、佐々木も真剣に質問を返していた模様。メジャーリーグのような実力主義と階層が強い環境で、こうした垣根のないやりとりは異例とも言えるという。 HRの視点から見ると、これはまさに「心理的安全性(Psychological Safety)」の現れではないかと思われる。新人が遠慮なく質問でき、ベテランが自然体で知識を共有できる職場環境。高い成果を求めながらも、お互いの成長を支え合う文化が根づいているのではないだろうか。 さらに注目すべきは、ドジャースが多国籍チームとしての包摂力を体現していること。大谷翔平選手や山本由伸投手、そして佐々木投手など、日本からの選手を数多く迎える中で、言語や国籍の違いが壁にならない工夫がされている。通訳のサポートやピア・メンタリング(仲間による指導)、そして明確な目的意識の共有が、見事にそれを乗り越えさせているのが分かる。 チームメイト同士の信頼感も際立っている。たとえばテオスカー・ヘルナンデス選手やアンディ・パヘ選手は、佐々木投手の失点を防ぐような守備でチームを救った。これは単なる個人技ではなく、仲間を思いやる心や連携があってこそのプレー。HR担当者としては、どの職場でも実現したい理想のチームワークではないだろうか。 ドジャースは、単なる野球チームではなく、「インクルーシブなリーダーシップ」「自発的なメンタリング」「チームベースの成果主義」を備えた、理想の組織文化を体現しているとも言える。人と組織の両方を高めたいと願う人事リーダーにとって、ドジャースタジアムには多くの学びがある。 アメリカ人事・雇用の最新情報が届きます! ニュース...