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アメリカ人事|年収10万ドルはもはや「成功の証」ではない

 アメリカ人事|年収10万ドルはもはや「成功の証」ではない


かつてアメリカにおいて「10万ドル」は、経済的安定と成功を象徴する年収の“マジックナンバー”とされてきた。だが、その神話はもはや通用しない現実が、HR領域においても無視できなくなっている。

Lending Treeが発表した最新のレポートによると、全米の主要都市圏のうち25地域において、年収10万ドルでは3人家族の基本的な生活費をまかないきれないことが明らかになった。たとえば、カリフォルニア州サンノゼでは、家賃、育児費、交通費などを含めた基本的支出を差し引いた後、毎月2,207ドルの赤字になるという。
このレポートでは、負債返済などを含めれば、実際に赤字となる都市はさらに増える可能性があると指摘されている。

“For generations of Americans, $100,000 has long been a magic number... However, that has changed dramatically in many of the nation’s biggest metros.”
― Lending Tree Report
出典:https://www.hrdive.com/news/100k-isnt-a-high-enough-salary-for-a-family/745597/

また、米国労働者の73%が「生活費以外の支出が困難」と感じており、12%は「生活必需品すら常に賄えない」と回答したという調査(Resume Now社、2025年1月)もある。さらにZety社の調査(2025年2月)では、半数の労働者が「現在の収入では家庭を持つ、あるいは家族を増やすことができない」と感じており、40%が「老後資金を貯められない」と回答している。


人事担当者への示唆

給与設計は“額面”ではなく“実質価値”で
都市部では、従業員が生活コストの高さに直面しており、給与の絶対額よりも「生活実感」に焦点を当てた設計が求められる。

福利厚生の再定義が急務
給与に加えて、住宅補助、育児支援、通勤費補助など「実質的な負担軽減」策の拡充は、リテンションにも直結する。

採用メッセージも現実に即した訴求を
「競争力ある給与」だけでは響かない。地域の生活コストに応じた説明や、長期的な安定を見据えた支援の提示が重要である。


給与水準に対する従業員の期待と、実際の生活とのギャップが拡大する中、HRが果たすべき役割も変化している。「10万ドル=安心」という幻想を超えた現実志向の報酬戦略が、今後ますます求められていくだろう。

 

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