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アメリカ人事 | スターバックスのストライキに学ぶ――雇用主が今すぐ取るべき2つのアクション

 アメリカ人事 | スターバックスのストライキに学ぶ――雇用主が今すぐ取るべき2つのアクション


2025年5月、スターバックスで発生したストライキは、たかが服装ルールが引き金だった。全米50店舗以上の労働者が職場を離れた原因は、新たに導入されたドレスコードである。

黒のシャツと指定された色のパンツという制限が、企業のブランド価値向上という名目で一方的に導入されたことが、現場の怒りを呼んだ。

もちろん、ドレスコードを定めること自体は、企業の裁量の範囲内であり、法律上の問題は通常生じない
しかし今回のケースは、組合との合意形成を怠った点が火種となり、現場の不満が一気に噴出したという構図である。

そして重要なのは、組合の有無に関係なく、こうした不満がどの企業にも潜在している可能性がある、という点である。

以下、非組合企業であっても今すぐ取り組むべきアクションを2つ提示する。


アクション①:現場の「生活コスト」を軽視しない制度設計を

スターバックスでは、新ドレスコードに対応するために新たな衣服の購入を余儀なくされた従業員が多く、「買い替えの余裕がない」との声も上がった。

企業側は無料でTシャツ2枚を配布したものの、十分とは言えない。
制度変更を行う際には、現場が実際にどれだけ負担を受けるか経済的・心理的インパクトを可視化する姿勢が欠かせない。

特にサービス業や低賃金業種では、「制服ルールひとつ」で士気が大きく変わるという現実を見逃してはならない。

(これはユニフォームではないため、企業側が購入を義務づけられるタイプのドレスコードではなかった)


アクション②:「見た目の統一」よりも「現場の納得と体験の質」を優先せよ

スターバックスは、CEOの方針のもと「コーヒーハウス体験の一貫性」を目的にドレスコードを厳格化したが、従業員はこう語った。

「お客様は、私たちの服の色よりも、30分も待たされるラテを気にしている」

この発言は、現場の本音であり、サービスの本質を突いている
いくら見た目を整えても、現場の納得がなければ顧客体験はむしろ損なわれる。

制度はトップダウンで整えるのではなく、現場と共に形作る「共創型」であるべきだ


総括:制度変更の裏にある“声なき不満”を聞き逃すな

スターバックスの今回のストライキは、「合法であっても、現場が納得しなければ制度は機能しない」ことを示している。

たとえ組合が存在しなくても、制度の変更が従業員の働く意義や尊厳に影響することはある
企業は、“見た目”の統一よりも、「働きがいのある職場」の実現こそが、ブランドを支える力になる


出所:
Starbucks union workers strike over dress code changes – HR Dive, May 14, 2025

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