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アメリカ人事| HRが自ら訴訟リスクを高めないために

 アメリカ人事| HRが自ら訴訟リスクを高めないために

― HR DIVE掲載事例から学ぶ、人事部が取るべき3つのアクション ―

近年、アメリカ企業における人事部(HR)の役割は、「会社を守る存在」から「自らが法的リスクの震源地になり得る存在」へと厳しく見られるようになっている。
HR DIVEが2026年1月に報じた、Citigroup元マネージング・ディレクターによる訴訟事例は、その象徴的なケースである。

本件では、人事部がハラスメント被害者を守るどころか、一方的で偏った調査を主導し、結果として建設的解雇(constructive discharge)に追い込んだと主張されている。
この事例から、アメリカ人事が今すぐ取るべきアクションは明確である。

以下、実務上特に重要な3点を整理する。

  1. アクション

「調査の公平性」を姿勢ではなくプロセスとして設計せよ

従業員調査において最も重要なのは、「公平に調査しているつもり」であることではない。
第三者から見ても公平に見えるプロセスを構築しているかどうかである。

本件では、人事部が以下のような対応を取ったとされている。

  • 男性社員には容認されていた行動を、女性社員にのみ「bullying」として問題視
  • 被調査者が提出した証人リストに一切連絡しない
  • 一方当事者のみを調査対象とし、相手方は調査しない

これらはすべて、「結論ありき」「先入観による調査」と評価されやすい典型例である。

人事部は以下を制度として明文化すべきである。

  • 調査対象者・比較対象者の選定基準
  • 証人ヒアリングを必須とするルール
  • 反論・補足説明の機会を必ず付与する手順

調査の中立性は、善意ではなく設計で担保されるべきものである。

  1. アクション

HRは「経営の代理人」ではなく「手続の管理者」であれ

アメリカ人事において最も危険なのは、HRが経営陣の意向を“忖度”し、調査をコントロールしてしまうことである。

本件では、人事が以下のような姿勢を取ったと主張されている。

  • 取調べに近い2時間の尋問
  • 質問が「確認」ではなく「断定」を前提とした形式
  • 調査開始時点で結論が決まっている印象を与える対応

このような対応は、人事部を「調査機関」ではなく、会社側の攻撃装置として位置づけてしまう。

HRの本来の役割は、

  • 事実を整理し
  • 手続を正しく進め
  • 判断は然るべきレベル(経営・法務)に委ねる

ことである。

HRが判断者・検察官・裁判官を同時に演じた瞬間、訴訟リスクは一気に高まる。

  1. アクション

「仲裁に逃げられない時代」を前提に制度を作り直せ

本件で原告が訴訟を起こせた背景には、2022年成立の
Ending Forced Arbitration of Sexual Assault and Sexual Harassment Act
の存在がある。

すなわち、

  • セクシュアルハラスメント・性的暴行に関する紛争は
  • 強制仲裁条項では封じ込められない

という時代に完全に移行している。

にもかかわらず、
「どうせ仲裁になる」
「外に出ない」
という前提でHR運用をしている企業は、極めて危険である。

今後の人事制度は、

  • 訴訟で公開される前提
  • 陪審に読まれる前提
  • メディアに書かれる前提

で設計されなければならない。

HRのメール、調査メモ、質問内容は、すべて将来の証拠になるという認識が不可欠である。

  1. おわりに

HRは「会社を守る存在」であると同時に、「会社を最も危険に晒し得る存在」でもある。
今回のHR DIVEの記事は、その現実を改めて突きつけている。

調査のやり方一つで、
ハラスメント対応は「防御」から「加害」に転じる。

それを防げるかどうかは、HR自身のプロフェッショナリズムにかかっている。

※ 本記事は HR DIVE 掲載記事
「Citi’s HR department ‘spearheaded’ a harassment campaign, former managing director alleges」
(2026年1月27日公開)を情報出所として作成している。
https://www.hrdive.com/news/citi-hr-department-harassment-campaign-managing-director/810636/?utm_source=Sailthru&utm_medium=email&utm_campaign=Issue:%202026-01-28%20HR%20Dive%20%5Bissue:81120%5D&utm_term=HR%20Dive

 

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