アメリカ人事| AIの使用強制は「宗教差別」になるか 2023年最高裁判決が企業に突きつける現実 【この記事のポイント】 従業員がAIの使用を「宗教的信念」を理由に拒否した場合、企業はTitle VII(民権法第7条)に基づく宗教的配慮(Religious Accommodation)の義務を負う可能性がある 2023年最高裁判決(Groff v. DeJoy)により、配慮を断る企業のハードルは大幅に引き上げられた 宗教差別訴訟の件数は急増しており、AI関連の案件は今後さらに増加する見通しだ 「AIに関するReligious Accommodation申請の第一号被告企業になる可能性がある」と法律専門家は警告する 1. 急増する宗教差別申請——コロナ禍からAIへ 米国の労働法律事務所Ogletree DeakinsのシェアホルダーであるJames Paul氏は、20年以上のキャリアの中で、宗教的配慮に関する問い合わせはかつて月に1件あるかないかだったと語る。それが新型コロナウイルスのパンデミック以降、状況は一変した。ワクチン接種義務、マスク着用、検査要件をめぐる宗教的異議申し立てが急増し、「現在は1日に2〜3件、問い合わせが来ない日はない」という状態になっている。 そして2026年、新たなトレンドがこの流れと交差しつつある——AIの職場導入だ。CHROアソシエーションとサウスカロライナ大学ダーラ・ムーア・ビジネススクールが2026年3月に実施した調査では、CHROの91%がAIを「最も差し迫った懸念事項」として挙げた。AIが職場の標準ツールになりつつある中、「AIの使用を信仰上の理由で拒否したい」という従業員が現れ始めている。 Quarles & BradyのパートナーEvan Peña氏はこう警告している。 「もし今あなたがこの問題に直面しているなら、テストケース(判例の当事者)になる可能性が十分にある。」 2. なぜAIが「宗教」と衝突するのか 米国の民権法第7条(Title VII of the Civil Rights Act of 1964)における「宗教」の定義は極めて広い。仏教・キリスト教・イスラム教・ユダヤ教といった伝統的な組織宗教に限らず、個人が誠実に(Sincerely)保持する宗教的・倫理的・道徳的信条も保護される。 カトリ...
アメリカ人事 Ⓡ ★アメリカ人事はPhilosophy LLCの登録商標です。★こんにちは!アメリカは連邦、各州でめまぐるしく法律が変わり、訴訟も多く、なかなか人事の問題はかっこよく解決というわけにもいかないことが沢山。 クライアントさんと一緒に伴走しながら、お困りごとをひとつひとつ乗り越えて日々ご支援の毎日です。【アメリカ人事】のパートナー山口憲和