2025年4月21日月曜日

アメリカ人事【雇用主が節約するための具体的な施策】

 

アメリカ人事【雇用主が節約するための具体的な施策】

1. FSA(Flexible Spending Account)やHSA(Health Savings Account)の活用を促進する

  • 社員が税引き前の給与を医療目的に使えるようにする制度を導入・推進することで、雇用主・従業員双方に税制上のメリットが生まれます。

    • 雇用主側は、FICA(社会保障税とメディケア税)の課税対象となる給与総額が減少するため、雇用主負担の税金も減ることになります。

    • 例えば、1人あたり$2,500をFSAに拠出した場合、約7.65%(FICA相当)の雇用主負担が節約可能 → 年間で約$191の節税になります。

2. FSAの「未使用資金の没収(forfeiture)」を抑える

  • 多くの従業員がFSAの「使いきりルール(use-it-or-lose-it)」を理解しておらず、資金を使い残して雇用主に戻ってくることがあります。

  • これは一見、雇用主にとっては利益のように見えますが、制度自体の利用が進まないと、全体としての節税効果が薄れるため、

    • 社員に「FSAで何が買えるか」について定期的に教育・周知する(例:年末に「使い忘れ防止」メールを送る)

    • FSA Storeなどの対象商品リンクを社内イントラで紹介

    • 社内ワークショップやウェビナーでHSA/FSAの使い方を解説
      などの啓発活動を行うことで、利用率が高まり、全体としての税制メリットが最大化します。

3. HSAの導入を検討する(特に中長期的なコスト削減に有効)

  • HSAは従業員にとって高額医療費の備えとして貯蓄できる制度であり、かつ未使用分を翌年以降も繰り越し可能であるため人気があります。

  • 高控除額型プラン(High-Deductible Health Plan:HDHP)とセットで提供することで、保険料自体を抑えることも可能です。

    • 雇用主にとっては、医療保険の企業負担分の圧縮につながる可能性があります。

4. 従業員がFSA/HSA対象商品を最大限に活用できるようにする

  • 提携ドラッグストアやオンラインショップ(例:FSA Store、AmazonのFSA/HSAセクション)へのアクセスを案内し、従業員が簡単に対象商品を把握できる仕組みを提供します。

  • 対象商品例:日焼け止め、救急箱、月経ケア用品、眼鏡、風邪薬、乳児用品など → 「意外と使える」ものが多いことを知ってもらう


【まとめ】

FSAやHSAは、従業員の福利厚生の質を高めながら雇用主の税負担を減らすことができる有効な制度です。ただし、制度の「使い残し」や「利用の誤解」により十分に活用されていないことが多いため、

「正しく使ってもらうことで、会社全体として税制上の節約が最大化する」

という視点で、教育・周知・制度設計の見直しを進めることが、最大の節約策となります。

▼参考記事
Billions of pretax healthcare funds go to waste each year. Retailers want to cash in.
https://www.retaildive.com/news/fsa-hsa-healthcare-shopper-awareness-beauty-retail-wellness/745339/?utm_source=Sailthru&utm_medium=email&utm_campaign=Issue:%202025-04-21%20Retail%20Dive%20Newsletter%20%5Bissue:72411%5D&utm_term=Retail%20Dive

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#アメリカ人事 #アメリカ #人事 #HR 

 

▼写真の出所:
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2025年4月19日土曜日

アメリカ人事 | なぜあの会社は儲かっているのか?TSMC編

 アメリカ人事 | なぜあの会社は儲かっているのか?TSMC編

経営者の悩みの75%はお金と人の問題と言われます。アメリカ人事ではビジョンを達成するための人材投資とそれを可能にするお金の流れを創り出すことが成功の鍵ではないでしょうか?

https://www.appeconomyinsights.com/p/pro-this-week-in-visuals-e6f?img=https%3A%2F%2Fsubstack-post-media.s3.amazonaws.com%2Fpublic%2Fimages%2Fdf1bb852-a036-44e6-99a6-4c8e70e9160e_2744x1539.png&open=false

【TSMCとはどんな会社か?】
TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company/台湾積体電路製造股份有限公司)は、1987年に設立された世界最大の半導体受託製造(ファウンドリ)専業企業です。
Apple、NVIDIA、AMDなどの顧客が設計した最先端チップを、TSMCが自社の工場で製造する「製造専門業者」として知られています。自社ブランド製品は持たず、技術力と設備投資によって競争優位を築いています。

【2025年第1四半期の業績ハイライト】

・売上高(Revenue):255億ドル(前年同期比35パーセント増)
・粗利益(Gross Profit):140億ドル(粗利益率55.6パーセント)
 → 材料費や製造原価を差し引いた利益であり、非常に高水準です。これは、TSMCの高度な設備投資と製造技術力によるコスト競争力の高さを示しています。

・営業利益(Operating Profit):110億ドル(営業利益率約43パーセント)
 → 粗利益から研究開発費や販売管理費を差し引いた利益です。巨額のR&D支出がありながらも高い営業利益率を維持しています。

・経常利益/純利益(Net Income):110億ドル(純利益率約43パーセント)
 → 営業外収益や税引後の最終利益で、営業利益と同水準にあることから、財務体質が極めて健全であることがわかります。

【成長の背景と要因】

・売上の59パーセントがHPC(高性能コンピューティング、AI関連)に関係するチップからの収益で構成されており、前年同期の46パーセントから大幅に拡大しています。
・先進ノード(3ナノメートル、5ナノメートル、7ナノメートル)の売上比率は全体の73パーセントを占めており、そのうち3ナノメートル単体で22パーセントに達しています。
・AIチップ向けに必要とされる高密度パッケージング技術であるCoWoS(Chip-on-Wafer-on-Substrate)への需要が急増しており、TSMCはその生産能力を倍増させる計画を進めています。

【今後の見通しと投資戦略】

・2025年第2四半期の売上高予測は288億ドルと、さらなる成長が見込まれています。
・2025年の設備投資額は380億ドルから420億ドルの見通しであり、米国での新工場(アリゾナ)や先端パッケージング施設などに積極的に投資しています。
・このような設備投資は、AI関連製品の需要増や地政学的リスクの分散、そして世界中の顧客への安定供給体制の確立を目的としています。

【まとめ】

TSMCは、世界の半導体製造の中心的存在であり、スマートフォンやAI、車載システムなど、今後も成長が見込まれる分野を支える重要な企業です。
粗利益率、営業利益率、純利益率のいずれも非常に高く、財務的な安定性と高い技術力を兼ね備えた企業です。特にAI市場の拡大を背景に、今後も持続的な成長が期待されています。

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2025年4月17日木曜日

アメリカ人事 | 65歳で健康保険打ち切り?年齢差別と企業の責任

 アメリカ人事 | 65歳で健康保険打ち切り?年齢差別と企業の責任

年齢による差別は、アメリカでは明確に違法である。にもかかわらず、「65歳になったら退職」「65歳以上はメディケアを使えばよい」という考えが、無意識のうちに人事慣行に染みついていないだろうか。

2025年4月10日、映画館チェーンのAllen Theatres社が、高齢従業員への差別を理由とするEEOC(米国雇用機会均等委員会)の訴訟で25万ドルの和解金を支払うことが発表された(EEOC v. Allen Theatres)。
同社は、73歳の長年勤務していたマネージャーに対し、COVID-19後の再開時に復職を認めず、また65歳になった従業員の健康保険の提供を停止し、メディケアへの移行を当然視していたという。さらには、65歳以上の従業員への給与も低く設定されていた。

“It violates federal anti-discrimination law for managers or any corporate officers to force workers over the age of 40 to involuntarily retire because of their age.”
― Mary Jo O’Neill, EEOC
出典:https://www.hrdive.com/news/theater-chain-settles-lawsuit-alleging-it-halted-workers-health-insurance/745424/

人事担当者への示唆:年齢に基づく制度運用の見直しを

・年齢による福利厚生の制限は原則NG
65歳以上になった従業員に対し、「メディケアがあるから」として企業の健康保険の提供を打ち切ることは、年齢差別(ADEA違反)に該当するリスクが高い。福利厚生制度は全従業員に平等に提供すべきである。

・例外:従業員が20名未満の企業はMedicareがPrimary
ただし、従業員が20名未満の会社では、MedicareがPrimary(主たる保険)となり、会社のグループ保険はSecondary扱いとなる。この場合、従業員が本人の意思でグループ保険を辞退し、Medicareのみを利用することは合法的に認められている。重要なのは、会社が辞退を強制しないことである。

・「普通の退職年齢」は通用しない
ADEA(Age Discrimination in Employment Act)は、40歳以上の従業員に対する雇用・解雇・待遇の差別を禁じている。「もう年だから辞めてもらう」という発言や対応は明確な違法行為となる。

・年齢差別防止研修が求められる時代
Allen Theatresは今後、全社員に対してEEO(平等雇用機会)研修を毎年実施する義務を負う。特に管理職や人事部門には年間5時間の差別防止研修が義務付けられた。これは他社にとっても重要なベンチマークである。

補足:MedicareとGroup HealthのPrimary/Secondaryルールの概要

雇用主の規模Medicareの扱いGroup Healthの扱い
20名未満Primary(主)Secondary(補助)
20名以上Secondary(補助)Primary(主)

アメリカでは、「高齢=退職」「メディケアで十分」という発想そのものが時代遅れであり、法律違反である可能性がある。今後ますます進む高齢化社会において、年齢に関わらず働ける環境づくりこそが、企業の持続可能性を左右する大きな鍵となるだろう。

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アメリカ人事|年収10万ドルはもはや「成功の証」ではない

 アメリカ人事|年収10万ドルはもはや「成功の証」ではない


かつてアメリカにおいて「10万ドル」は、経済的安定と成功を象徴する年収の“マジックナンバー”とされてきた。だが、その神話はもはや通用しない現実が、HR領域においても無視できなくなっている。

Lending Treeが発表した最新のレポートによると、全米の主要都市圏のうち25地域において、年収10万ドルでは3人家族の基本的な生活費をまかないきれないことが明らかになった。たとえば、カリフォルニア州サンノゼでは、家賃、育児費、交通費などを含めた基本的支出を差し引いた後、毎月2,207ドルの赤字になるという。
このレポートでは、負債返済などを含めれば、実際に赤字となる都市はさらに増える可能性があると指摘されている。

“For generations of Americans, $100,000 has long been a magic number... However, that has changed dramatically in many of the nation’s biggest metros.”
― Lending Tree Report
出典:https://www.hrdive.com/news/100k-isnt-a-high-enough-salary-for-a-family/745597/

また、米国労働者の73%が「生活費以外の支出が困難」と感じており、12%は「生活必需品すら常に賄えない」と回答したという調査(Resume Now社、2025年1月)もある。さらにZety社の調査(2025年2月)では、半数の労働者が「現在の収入では家庭を持つ、あるいは家族を増やすことができない」と感じており、40%が「老後資金を貯められない」と回答している。


人事担当者への示唆

給与設計は“額面”ではなく“実質価値”で
都市部では、従業員が生活コストの高さに直面しており、給与の絶対額よりも「生活実感」に焦点を当てた設計が求められる。

福利厚生の再定義が急務
給与に加えて、住宅補助、育児支援、通勤費補助など「実質的な負担軽減」策の拡充は、リテンションにも直結する。

採用メッセージも現実に即した訴求を
「競争力ある給与」だけでは響かない。地域の生活コストに応じた説明や、長期的な安定を見据えた支援の提示が重要である。


給与水準に対する従業員の期待と、実際の生活とのギャップが拡大する中、HRが果たすべき役割も変化している。「10万ドル=安心」という幻想を超えた現実志向の報酬戦略が、今後ますます求められていくだろう。

 

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2025年4月16日水曜日

アメリカ人事「静かな崩壊」が日本企業をむしばむ──目に見えない離職予備軍への処方箋

 

アメリカ人事「静かな崩壊」が日本企業をむしばむ──目に見えない離職予備軍への処方箋


ここ数年、「静かな退職(Quiet Quitting)」や「リスキリング」「ウェルビーイング」など、働き方や職場意識に関する新たな用語がアメリカから日本に次々と上陸している。そして今、注目すべき新たなキーワードが登場した――「静かな崩壊(Quiet Cracking)」である。

この言葉は、米国の人材開発企業TalentLMSによって報告されたもので、従業員が表向きは就業を継続しているものの、心の中では仕事に対するモチベーションを失い、生産性が低下し、ひそかに退職を検討している状態を指す。

日本企業においても、「辞めるとは言っていないが、心はすでに離れている」従業員が存在しているのではないか。これは単なるエンゲージメントの低下ではなく、組織の根幹を脅かす“静かな危機”である。

背景にあるのは「学ばない組織」と「聞かない上司」

アメリカの調査によれば、「研修や教育機会を過去1年間受けていない従業員」は、自身の仕事に対して不安を抱く可能性が140%も高まるという結果が出ている。これは日本においても同様である。かつてのOJT(On the Job Training)任せの風土では通用しなくなり、スキルアップの機会を与えないことが、本人の自信喪失と離職意識を加速させる時代となった。

また、日本企業で根深い問題となっているのが「上司との断絶」である。TalentLMSの調査では、「上司が自分の声を聞いていない」と感じている従業員の割合が47%にも達しており、日本でも上司からの一方的な指示命令に従うだけの職場環境では、心理的安全性が育まれない。

「頑張らない若者」ではなく、「壊れかけた職場」に目を向けるべき

若手社員が積極的に手を挙げない、意見を出さない、主体的に動かない──こうした声を耳にすることは多い。しかし、それを「最近の若者は受け身だ」と一方的に片づけることは危険である。その背後に、すでに“静かな崩壊”が始まっている可能性があるからだ。

たとえば、リモートワークの導入により上司との接点が激減した中で、誰にも悩みを相談できない若手社員。過剰な成果主義の中で、フィードバックもなく努力が報われないと感じる中堅社員。こうした日々の積み重ねが、目に見えないかたちで退職予備軍を増やしている。

処方箋は「育成の再設計」と「対話の再構築」

では、日本企業はこの「静かな崩壊」にどう立ち向かうべきか。TalentLMSのCEOであるニキル・アローラ氏は、「人は立ち止まり、声を聞いてもらえず、将来に希望が持てなくなるときに、静かに崩れていく」と述べている。

日本企業においても、定期的な1on1ミーティングやキャリア面談の導入、社内メンター制度の見直し、リスキリング機会の提供といった育成の再設計が急務である。また、管理職層に対する「傾聴トレーニング」や「心理的安全性」に関する研修も重要となる。

「辞めたい」と言い出す前に、「壊れかけている」サインを見逃さない。人事の目利き力が、これからの組織の持続性を左右する時代である。

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2025年4月14日月曜日

アメリカ人事|オラクル、販売員の歩合給をめぐる10年越しの訴訟で1,550万ドルの和解へ

 

アメリカ人事|オラクル、販売員の歩合給をめぐる10年越しの訴訟で1,550万ドルの和解へ ― カリフォルニア州の賃金法違反を原告が主張

オラクルは、同社がカリフォルニア州の歩合制営業社員に対して州の賃金法に違反したとして、元社員2名が提起した訴訟について、1,550万ドル(約23億円)の和解に合意したと、原告側の弁護士が水曜日に発表しました。

Abrishamcar v. Oracle America, Inc.」の原告は、2015年にカリフォルニア州私的検察官法(PAGA)に基づき訴訟を提起し、オラクルの歩合賃金ポリシーが州の労働法規に違反しており、獲得済みの歩合賃金を違法に控除していたと主張しました。加えて、すべての獲得賃金を支払わなかったこと、不正確な賃金明細の提供、違法な機密保持契約の強要も訴えの対象となっていました。

原告は、カリフォルニア州サンマテオ郡の高等裁判所に対し、和解案の承認を求める申し立てを行っています。HR Diveが入手した和解文書によれば、オラクルは訴状に記載された全ての主張、責任、違法行為を否定しています。

洞察:
オラクルを相手取ったこの訴訟は約10年にわたって続いており、今回の和解案によって5,000人以上の現・元社員に対し、罰則金の支払いがなされる見込みです(原告側の声明による)。

訴状によると、オラクルは歩合制営業社員に対し、雇用開始時に署名済みの歩合契約書を提供しておらず、カリフォルニア州法で義務付けられているタイミングで提供も署名も行われませんでした。さらに、歩合の計算方法や支払方法についても明記されていなかったとされています。

また、オラクルは事業コストを社員に転嫁する目的で、歩合賃金から違法に控除する権利を保持していたとも主張されています。その結果、原告らに対しては、稼得賃金の総額を明示した正確な明細書が提供されなかったとされています。

「この和解は、何年もの歳月をかけてこの結果を得るために尽力してくださった依頼人の献身の証です」と、原告側の共同主任弁護士であるValerian Lawの代表弁護士、シンイン・バレリアン氏は述べました。

この訴訟は、PAGA(カリフォルニア州私的検察官法)に基づいて提起されました。PAGAは、社員が自分自身や他の現・元社員を代表して民事制裁金の回収を求める訴訟を提起できる州法です。法律事務所Duane Morrisによる分析によれば、2004年の施行以来、PAGAに基づく訴訟の件数は年々増加しており、2024年には2023年に比べて約22%の増加が見られたとのことです。

▼出所:
https://www.hrdive.com/news/oracle-settles-california-paga-pay-dispute/745197/?utm_source=Sailthru&utm_medium=email&utm_campaign=Issue:%202025-04-14%20Compliance%20Weekly%20%5Bissue:72217%5D&utm_term=HR%20Dive:%20Compliance

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2025年4月13日日曜日

アメリカ人事 | ドジャースに学ぶ、インクルーシブで高成果なチーム文化のつくり方

 アメリカ人事 | ドジャースに学ぶ、インクルーシブで高成果なチーム文化のつくり方


HRの世界では、「インクルーシブ(包括的)で協働的、そして高い成果を上げる文化づくり」がよく語られる。しかし、その理想的な事例は、会議室よりも球場で見つかるかもしれない。MLB(メジャーリーグベースボール)で最も成功し、先進的な球団のひとつであるロサンゼルス・ドジャースは、スポーツの枠を超えて、組織文化における貴重なヒントを私たちに提供してくれる。

最近話題になったのは、二度のサイ・ヤング賞を受賞したブレイク・スネル投手と、ルーキーの佐々木朗希投手との間で交わされた長い会話。試合中にもかかわらず、スネルは熱心に佐々木に話しかけ、佐々木も真剣に質問を返していた模様。メジャーリーグのような実力主義と階層が強い環境で、こうした垣根のないやりとりは異例とも言えるという。

HRの視点から見ると、これはまさに「心理的安全性(Psychological Safety)」の現れではないかと思われる。新人が遠慮なく質問でき、ベテランが自然体で知識を共有できる職場環境。高い成果を求めながらも、お互いの成長を支え合う文化が根づいているのではないだろうか。

さらに注目すべきは、ドジャースが多国籍チームとしての包摂力を体現していること。大谷翔平選手や山本由伸投手、そして佐々木投手など、日本からの選手を数多く迎える中で、言語や国籍の違いが壁にならない工夫がされている。通訳のサポートやピア・メンタリング(仲間による指導)、そして明確な目的意識の共有が、見事にそれを乗り越えさせているのが分かる。

チームメイト同士の信頼感も際立っている。たとえばテオスカー・ヘルナンデス選手やアンディ・パヘ選手は、佐々木投手の失点を防ぐような守備でチームを救った。これは単なる個人技ではなく、仲間を思いやる心や連携があってこそのプレー。HR担当者としては、どの職場でも実現したい理想のチームワークではないだろうか。

ドジャースは、単なる野球チームではなく、「インクルーシブなリーダーシップ」「自発的なメンタリング」「チームベースの成果主義」を備えた、理想の組織文化を体現しているとも言える。人と組織の両方を高めたいと願う人事リーダーにとって、ドジャースタジアムには多くの学びがある。

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